2018年8月12日 (日)

褒めるべき時には褒めよう

 週刊東洋経済8月13日号の9頁に経済評論家の小峰隆夫氏が「褒めるべき時には褒めよう」というコラムを書かれていました。

 世界では、トランプ大統領が仕掛けた保護貿易主義により、米中だけでなくEUやカナダまで報復関税合戦を始めている経済情勢であることが述べられています。経済学的には、貿易の振興は善、関税障壁など貿易を妨げる行為は悪です。とはいえ、貿易により海外から商品が流入することで競争力がない商品を生産していた事業者は、危機に直面し、もしかするとその生産を止めなくてはならなくなります。

 しかし、安い商品が入ってくれば、その国の消費者は、良いものを安く買うことができ、余ったお金で他の商品も買うことができます。また、その国に良質で安価に作れる商品があれば、貿易によってより多くの売上高を獲得して、多くの労働者を雇用することになるでしょう。こうした効果は、貿易の相手国にも生じます。その結果、それぞれの国で社会的余剰が増えるというのが貿易の理論。ま、競争力のない商品の生産に関わっていた労働者が、優位性のある商品の生産に関わる労働者に転換できれば・・・の話なのかもしれません。そこの転換が容易ではないから、トランプさんは、貿易不均衡を怪しからんといい、新しい業種へ転換できない労働者はトランプさんを支持するのでしょう。実際、フィラデルフィアで製鉄所に勤めていた50歳のオジサンに「シリコンバレーではエンジニアが高給を取れるらしいよ」といっても、エンジニアになれる人はいないと思います。しかし、そういうオジサンへの救済策は必要かもしれませんが、若い人は、エンジニアになる勉強をすればよい。なので貿易は振興したほうが国民のため、世界の人々のためになるのでしょう。

 それなのに報復関税により貿易が縮小させられようとしている。そんな世界情勢の中で、日本はTPP11を発効させようと頑張ってきました。アメリカが抜けてもそれ以外の国で発効させようと働きかけてきました。また、RCEP(東アジア地域包括経済連携)の合意も目指しているそうです。小峰先生は、日本のそうした貿易振興への尽力を解説し、日本の頑張りは評価されるべきだという意見なのですね。日本のマスコミも評論家も政府を批判すると仕事をした気になるのか、まず褒めるようなことはしません。しかし、誉めるべきときには大いに誉めるべきだというのが小峰先生の論考なのですね。

 確かにTPPについては日本でも農家が反対したり・・・というのもありますが、平均年齢70歳の農家が日本人や海外の人に喜ばれる良質な産物を作れるのだろうか?と考えると、TPPを実施しつつ、農家の若返り策を検討・実施したほうが良いのかもしれません。マスコミも評論家も政府を批判していれば頭よさそうに見えたり、有識者っぽくみえることを期待してしまうのかもしれません。しかし、是々非々で、良いことをしている時にはそれを褒めるというのは大事なことだと思います。このところ、政府への批判が日本中に渦巻いていたので、褒めるべき時には褒めるという当たり前のことがかえって新鮮に感じられました。

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2018年6月21日 (木)

株主総会の実情

 3月決算企業の株主総会シーズンを迎えています。取締役を選任したり、会社で一番偉くて、会社の所有者が株主です・・・というのが教科書的な位置づけだと思います。したがって、会社の将来を見通すうえでの重要な情報を株主総会で社長から引き出したいと思う方も少なくないかと思います。
 
 ところが、そういう株主からの質問は、往々にして、サラリとかわされて、表面的な回答しかもらえなかったりすることが多い。それは何故か?というのを書いてみたいと思ったのが、本日のブログ。
 
 東京証券取引所の有価証券上場規程を見てみると、402条に「上場会社は、次の各号のいずれかに該当する場合(施行規則で定める基準に該当するものその他の投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものと当取引所が認めるものを除く。)は、施行規則で定めるところにより、直ちにその内容を開示しなければならない。」といった定めがあります。その中を見てみると、「t 事業の全部又は一部の休止又は廃止」「w 新たな事業の開始(新商品の販売又は新たな役務の提供の企業化を含む。以下同じ。)」といった項目、「aa 代表取締役又は代表執行役(協同組織金融機関を代表すべき役員を含む。)の異動」といった、まずは会社の所有者に教えてよ!という項目が並んでおります。しかし、株主に優先して開示するのではなく、将来の株主(株を買うかもしれない人)や社債を保有している人などにも公平に知らせなければならないわけです。
 
 ということは、株主総会で「××の事業は、シェアも低く、撤退すべきじゃないんですか?」といった質問をしても、「鋭い質問をありがとうございます。実は、来月、撤退を公表しようと準備しておりました。」なんて返事は絶対に来ません。その瞬間、上場規則違反になってしまいますので。おそらくは、「当社の各事業の運営については、常に取締役会等で検討をしておりまして、ご質問の××事業についても、将来的にお知らせすべき何らかの意思決定がありました場合には、速やかに開示させていただきます。」といった何ら情報を含まないようなつまらないお返事が返ってくるのだと思います。
 
 そうすると、株主総会って、なんのために開くの?何を期待して出席するの?ということになります。上記のような説明からすると何も期待できないことになりそうです。しかし、私が思うには、株主総会の説明資料などで、どのようなポイントに力点を置いて説明がなされるか、それを説明する社長をはじめとする各取締役の生の声を聞けること、が大きいのではないかと思います。なんでもかんでも社長が説明する会社も問題でしょうし、具体的な質問はすべて担当取締役に答えさせる会社も問題でしょう。そのあたりの雰囲気から、会社のガバナンスの状況を窺い知ることができるかもしれない・・・というのが、大事なのではないかと。したがって、「円安になると、当社の各事業にはそれぞれどのような影響が生じますか?」とか「米国の関税障壁のような状況があるが、当社の事業には影響が及びますか?」といった事業内容の詳細を教えてもらうような質問が良いのかもしれません。といっても、これは、事業報告に対する質問であって、議案への質問ではないですね。取締役会出席率の悪い社外役員がいるようなら、そこは「お忙しいようですが、当社へのプライオリティが低いということでしょうか」って聞いてみるのはよいかもしれません。

 

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2018年4月18日 (水)

ギクシャクする経済

 顧問先の社長とお話をしていて、「セラミックコンデンサとか、日本での生産が中止みたいな話で、部品調達ができないから製品が作れないといった話がありまして。」という問題を聞かせていただきました。中国などから部品を輸入するにも毎月のように値段が上がり、かつ、納期がかなり先だと言われたり、ロットが大きかったりで、かなり厳しいとのこと。
 
 本来、輸入すると値段が高くなる・・・という需給状況なら、国産メーカーも生産中止などしないはずなのですが、なぜ、こうなってしまうのでしょう。と、考えると、やはり日本企業は、「最終製品価格を引き上げることができない」というこの20年間のジレンマに嵌まってしまって、30銭のコンデンサが1円になった、そのほかの部材も高くなったら値上げするしかないのに、それを検討もせずに「30銭でしか買わない」と部材の卸業者に通告し、本当に買えないとわかると、じゃあ、この製品は採算性がなくなるので、この製品の生産自体を止めようか・・・みたいな発想になってしまっているのではないでしょうか。
 
 最終製品のメーカーがそうだから、部品の生産会社も30銭でしか売れないなら、採算が合わないから止めようとなる。しかし、中国やベトナムでは、あらゆる製品が大量に作られているから、需要と供給の論理で足りない商品は値段が上がるし、需給が緩めば値段が下がるといった競争がある。本当に必要な商品なら、値段が上がっても最終需要国は買ってくれるはず、日本を除いては。
 
 ヤマト運輸は、人材を大事にしたいから、物流量を下げたくて値上げをしたけど、思ったほどには顧客を減らすのに失敗してしまいました。このように本当に求められている商品やサービスなら、値上げはできるように思います。値上げという商品戦略を考えようとしない結果、国内部品生産業者が不必要に虐げられ、撤退に追い込まれている側面があるのではないかな?と中小企業がメイン顧客である税理士は思うのであります。
 
 社長の高齢化による廃業による供給停止も含め、日本経済は、これから数年間、「いくらでもお金は出すと言っているのに部品が手に入らない」、「慌てて海外品に切り替えたら、品質が大幅に変わって大変になった」などなど、ギクシャクする局面が出てくるのかもしれません。

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2018年3月12日 (月)

安さをアピールする値付けは値上げに弱い

 一昨日、3月8日のニュースだと思いましたが、GDP改定値が発表され、年率プラス1.6%に上方修正されたとのことです。仕事が忙しくなるのだから、求人が増えて、給与のアップにつながって、それがさらに消費を増やすという方向になると良いなぁと思いました。
 
 しかし、給与がアップになると、企業の人件費の負担が増えることにもなります。給与が増えたら、製品やサービスの価格を引き上げて、必要な利益を確保してくれれば、日銀が目指す安定的な2%の物価上昇が実現するということになります。しかし、今までのところ、物価が上がっていく気配はあまり強く感じることはありません。
 
 ふと、考えたのですが、日本は、100円ショップとか回転寿司の一皿100円とか価格の値上げへの障壁になる値付けが多いのかもしれないと思いました。また、吉野家の牛丼は、380円ですが、こうした大規模チェーン店が値段の改定をしたりすると、これが大きなニュースとして報道されたりします。先般、鳥貴族が値上げを発表したら、「お客さんが逃げるんじゃないか?」というくらいに大きく報道されていました。
 
 継続的に物価が上昇しているアメリカでは、飲食店も毎年のようにメニュー改定しているようです。企業の自由度が高くていいなぁという感じがします。100円ぽっきり・・・と言っても消費税を乗せれば108円だし、だんだん、支払い手段は、現金からSuicaやNanacoなどの電子マネーに移ってきています。「100円玉で済む」とか「千円札でお釣りがくる」といった支払いのタイミングで値段を感じる機会も減ってきているわけで、値上げという企業行動への過度な反応はしない方がよいのではないかと思ったりしました。
 
 などと、書くと、「それは、企業側に立った意見で、消費者のことを考えていない。」と言われそうな気がします。しかし、値上げがあった分だけ、給与や自営業者の売上が増えてくれれば、誰も損しないのですよね。むしろ、住宅ローンを抱えている人などは、得をするのです。物価が上がり、給与が上がっても、ローンの残高は物価に連動しませんので。

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2018年2月 6日 (火)

相続税対策で賃貸住宅するべきか?

 今日、顧問先の社長からメールが飛び込んできました。兄弟が土地を購入して賃貸住宅を建築するというプランに飛びつきそうなのだが、サラリーマンが急にやってうまく行くとは思えない、相談に乗ってもらえるか?というお話。
 
 ということで、私の著書「税理士も知っておきたい相続手続・書類収集の実務マニュアル」の最後のページから引用しておきます。
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 7.賃貸住宅の建築

 

 これは,自宅や遊休の土地に賃貸マンションや賃貸アパートを建築して,建物の取得原価の金額と相続の際の固定資産税評価額との差額を節税し,さらに土地の評価額を下げるといった節税手法です。最近では,タワーマンションの高層階を購入するといった手法も耳にします。

 

 これについては,相応の効果があるのは確かです。ただし,借り入れをしてマンションを建築したにも関わらず,満室にすることができず,借入金の元利返済に苦労するといった話もしばしば耳にするところです。こういう話は,自分の営業のマイナスになりますから建築業者はしません。そのため,相続税対策をしようとしている人に税理士が伝えてあげないといけない事項だと考えています。人口が増えている時代なら部屋は放っておいても埋まったかもしれませんが,人口減少時代です。全国の自治体で空き家対策といった話が出ている時代だということを認識したいものです。賃貸住宅を建てるなら,相続対策ではなく,不動産賃貸業を始める覚悟で建てるべきだと顧客に助言しています。

 「30年一括借り上げ」だから安心といった話もよく耳にしますが,こあれにも注意が必要です。業者が用意してくる収支計画表は,多くの場合,30年間同じ賃料で賃貸できる前提で収支計画が作られています。しかし,築20年以上の部屋が新築当時の値段で貸せるわけがありません(少なくとも物価が上昇しない限り)。賃料の低下を織り込むと借入金の返済額を割り込んでしまう事例を見ることがあります。

 こうした経済情勢を考えながら,顧客にアドバイスするのも税理士の仕事だと考えています。
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 ここでの「不動産賃貸業を始める覚悟で建てるべき」というのは、不動産屋さんから「良さそうな物件が出ました」と言われたら、直後の仕事や約束を放り出して現場を見に行く、そういうプライオリティを不動産に関して持つということ。億単位の投資をするかどうか、良い物件なら、翌日には他の人に買われちゃうかもしれない、それが不動産です。建築業者が持ち込んできた案件というのは、そういう風に右から左に動かなかった物件なわけですから、良質な物件ではないわけです。
 
 土地と建物の金額を考えたら、1億円、2億円という単位の買い物です。車を買うときに「あと10万円値引きできないの?」って聞きませんか? それなら、1億円の買い物で、「あと5百万円安ければ、考えてもいい」くらいの話をするべきじゃないですか? 昨日お会いした地主さんには、「いろいろな建設業者が建てないか?って話に来るけど、得する気がしない。何もしないで駐車場にしておくのは駄目ですか?」って聞かれました。「リスクを取らない、その代わりに利益も狙わないというのも立派な意思決定なので、よいと思いますよ。」ってお返事しました。土地を持っていて、アパートを何棟か所有している地主さん(ある意味、不動産屋さん)がそういうくらいですから、素人は迂闊に手を出すものではないと思います。

 

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2017年12月29日 (金)

少子高齢化の影響~~2017年もありがとうございました。

 今年は、いよいよ少子高齢化による労働力不足が明確になってきて、賃金のアップなどが明確化してきたように思います。私の事務所では、この数年来、「何か節税策ってないですか?」って利益の出ている会社から聞かれると、「人を雇っておきましょうよ」と答えていました。新たに人を雇うと未経験者、若い人を雇う場合で3~4百万円の支出になると思いますが、実効税率30%として100万円くらいの節税になるわけです。実質2~3百万円で雇えたと考えてもよいし、定着してくれないですぐに退職されちゃっても、節税したんだと考えれば腹も立たない。「そのうち、本当に採用したくても人が採れない時代が来るんですよ」と言ってきました。
 
 事務所としては、従来より、やる気のある経営者を応援したいという気持ちでやってきておりますが、平成27年の相続税の基礎控除の改正の施行以来、相続の仕事も増えている印象があります。ちなみにその年に発売した「顧問税理士も知っておきたい 相続手続・書類収集の実務マニュアル」ですが、お陰様で増刷を重ね、本年、第2版となりました。「顧問税理士も知っておきたい」という文言がタイトルに入ってはいますが、これは「相続の当事者だけでなく、顧問税理士も相続人の方々に説明できるよう知っておきたい」という意味合いで、一般の相続人の方々にも読みやすい本になっていると自負しております。
 
 そのほか、労働力が減っている中、プライマリーバランスは均衡化させるなら、GDPは600兆円くらいほしい、というのがアベノミクス。今より経済を2割増しで動かすためには、専業主婦や103万円以下しか働いていない方々にももっと働いてほしいといった施策も出ていますが、量的な解決だけでなく、質的にも解決しないと2割増し水準は無理。となると労働生産性のアップが求められます。経費精算書をいちいち手やパソコンで作成して紙出力したうえで経理に提出というのは非効率。あるいは納品書、請求明細書、請求書を紙で受領して、それを後でファイリングするのも付加価値なさそうな仕事。スキャナ保存制度を改めて考えると、日本のホワイトカラーの生産性を向上させるツールとして活用できそうだなぁと思う次第。私の「国税庁Q&A対応 実践税務書類のスマホ・スキャナ保存」「平成28年度改正対応こうなる! 国税スキャナ・スマホ撮影保存」がそうした労働生産性アップに役立ってくれたらいいなぁと思う次第。
 
 と、少しばかり(かなり)宣伝臭くなってしまったかもしれませんが、平成30年度税制改正大綱を見ても、電子申告や年末調整の電子化など、企業の電子化の流れは、一層進むように思います。個人の青色申告事業者が複式簿記で帳簿を作成し、帳簿の電子保存ないし電子申告をしていれば青色申告特別控除がそれ以外の場合より10万円アップといった改正事項は、電子化促進の1つの姿だと思います。
 
 なにか書きたくなることが見つかったら大晦日までに新しいエントリーを上げちゃうかもしれませんが、一応、2017年の書き納めということと考えております。皆様、お読みいただいてありがとうございました。

 

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2017年12月13日 (水)

メディアは税制をきちんと伝えているか?

 今朝のテレビ朝日で電子タバコの増税も予定されているということに対して、家計評論家の荻原博子氏のコメントとして、「第三のビールの増税と同じく取れるところから取るということ」ではないかと報じていました。これは、違うと思ったので、以下、私の事務所が今年の春にお客様に送ったニュースの一部を載せたいと思います。読みながら「昔は、かっぱ黄桜かっぱっぱ」なんてテレビCMがあったな、確かに日本酒が売れていた時代だったなどと思い起してもらえるかもしれません。
 
1.とうとうビールの税金の改革が
 今年は、気楽にお酒のお話です。今年度の税制改正で酒税についての改正が行われました。
 
 ビール、発泡酒2区分、新ジャンル(第三のビール)とビール類の酒税は4区分されています。350ミリリットルの缶で換算すると、これまで
①ビール(麦芽比率50%以上)に77円
②発泡酒(麦芽比率25%~50%)に63.24円
③発泡酒(麦芽比率25%未満)に46.98円
④新ジャンルに28円
という酒税が掛けられていました。
 
 これに対して、平成32年10月、平成35年10月に段階的に改正を入れながら、最終は平成38年10月に54.25円で統一しようという改正となっています。なお、新ジャンルの区分には、チューハイなども分類されていますが、チューハイ類については、平成38年に35円へと引き上げられることになります。
 
2.実は、ビールだけの改正ではない
 世間では、「発泡酒の値段が上がって、お財布が苦しくなる」と言われていますが、実は、清酒の引き下げとワインなど果実酒の引き上げが平成35年に行われ、梅酒やリキュールなど混成酒類の引き下げが平成32年に行われます。このようにビールだけではなく、酒類全般の税率を整えるという改正であるといえます。
 
3.こうした改正はなぜ?
 世間の声では、キリンの「のどごし生」、アサヒ「クリアアサヒ」、サッポロ「麦とホップ」、サントリー「金麦」などの値上げにつながることが残念なことと受け止められているようです。
 
 しかし、酒類全般の改正として考えるならば、安すぎる第三のビールやチューハイのせいで割りを食っていた清酒や梅酒の税率が下がるので、清酒や梅酒が買いやすくなり、ビールも発泡酒も第三のビールと統合して、本来の「ビール」の税率になることで、本格的なビールが飲みやすくなります。ビール会社も酒税の区分を気にすることなく商品開発ができるようになります。
 
 税制には公平性、中立性、簡素の3つが求められると言われています。これまでは税率の区分によりビール的な商品が生まれるという点で、税制が企業の商品競争の中立性を歪めていましたし、消費者にとっては簡素でない税制だったといえます。また、清酒のメーカーにとっては、公平でなかったという不満があったと思います。今回の酒税法の改正は、税制の歪みを正すので、10年の間に商品戦略なども含めて、対応してくださいという意味が込められています。
 
4.さらに国際戦略の観点から
 発泡酒といった酒税法上の区分は、日本だけのものです。すなわち、「金麦」のような第三のビールは、日本でしか通用しないガラパゴス商品だといえます。日本のビールメーカーは、ガラパゴス商品による国内競争に会社資源を投下して、国際競争に目を向けることができなかったのです。バドワイザーやハイネケンと並んで世界中で飲まれる日本のビールブランドの成長を期待する税制改正であるとも言えるのです。

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2017年10月 1日 (日)

ヤマト運輸、amazon向けの値上げ合意

 9月28日の日本経済新聞で、宅配最大手のヤマト運輸がインターネット通販最大手の米アマゾン・ドット・コムとの運賃交渉で値上げすることで大筋合意したという記事が出ておりました。値上げ幅は、4割超になるということです。
 
 そうなると、通常配送2000円未満の場合に350円という配送料の値上げもあるのかもしれません。amazonで買い物をする方からは、困った話だということかもしれませんが、ヤマト運輸の従業員のことを考えると、良いことだと思います。また、ちょっとした小物でも大きな箱に入って送られてくるエコに反したamazonの配送方式を考えると、ヤマト運輸は箱の中の空気を運ばされていたような気もするわけで、環境保護を考えると、好ましいのではないでしょうか。
 
 小物でもかなり大きな箱に詰めて運んでくるのは、箱の種類が少ない方がamazonの倉庫から出荷する際の荷造りが楽なのだからだと思います。大は小を兼ねるので、何でも大きな箱で荷造りする。しかし、その結果、ヤマト運輸のトラックの荷台や台車の積載量が圧迫され、よりたくさんのトラックが必要となり、台車で何度も配達員が往復するようになるのだと思います。
 
 amazonって、自分の会社を出た後のことは考えていないということなのではないでしょうか。外資系企業の発想って、そうなのかもしれません。「こんな大きな箱で」と思うなら、それに見合った料金を提示してくれば良いので、今の料金で合意している以上、どういう箱で送ろうが知ったことではない、ということなのでは? こういう発想は、「三方よし」の日本企業にはない。逆に言えば、グローバルな時代、日本企業は、日本の流儀というガラパゴスな仕事の仕方をしていて、それにより得られるべき利益を失い、それが、賃金の伸び悩みという結果を招いたのではないでしょうか。
 
 注文したら、その日のうちに、あるいは遅くとも翌日には品物が到着するという素晴らしいサービスの値段が相応に高いのは仕方がないことです。その値段も織り込んでいたら、amazonの商品の値段がリアルな店舗より安いというのは矛盾がある。今回の値上げの結果として、amazonで買うより、お店で買おうかという人が少し増え、ヤマト運輸の忙しさが少し緩和して、amazonの利益がリアル店舗やヤマト運輸のドライバーの方々とヤマト運輸に移転するなら、それも良いことではないかと考えました。

 

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2017年8月15日 (火)

公的年金制度のありがたさ

 ネットで見かけたニュースで、年金が11万円しかもらえないので、いったん隠居したが再び働きだして、3か所掛け持ちで苦労しているという69歳の人の記事が出ていました。「年金は少なくて、日本の社会保障はひどいね」と読者に伝えたいという記事に思えました。

 しかし、この方についていえば、そもそも65歳で年金を受給しはじめる際に11万円ってわかっていたはず。それで十分な暮らしができるかどうか、判断できたはず。実は、公的年金制度は、70歳までの受給繰り下げの制度があります。70歳からの受給開始すれば42%アップになり、金額にすれば約15万円の年金受給額になったわけです。月額4万円、年間50万円近く違うなら、65歳からの5年間、何とか仕事を続けて、貯金を取り崩してでも15万円の年金をもらうようにするという手もあったと思います。60歳台は、働けれるけれど、70歳代、80歳代になったら難しいわけですから。

 この年金受給の繰り下げ制度って、意外と理解されていないし、活用されていないと思います。という話をすると、「平均寿命とか考えると、早くもらわないと損しちゃう」とか言う方が多いです。しかし、平均寿命って、今、生まれた赤ちゃんが平均で何歳まで生きるか?という期待値です。当然、65歳まで無事に生きた人の平均余命は、平均寿命より長い。男性でも85歳とか90歳まで生きちゃうかもという前提で老後設計をすべきです。女性の場合だと、65歳の段階で足腰に問題なかったら、90歳かと95歳まで生きるかも、80歳の段階で足腰に問題なかったら100歳まで生きるかも、くらいの老後設計が必要なのではないでしょうか。

 という観点では、死ぬまで受給できる公的年金は「長生きリスク」に備える保険。保険というと、死んだり、病気した時の保障を思い浮かべますが、長生きしすぎることもリスクです。だって、90歳になったら、さすがに働けないし、うっかりすると子どもが先に死んでいるかもしれないし、昨今、未婚のままの一人暮らしの人も多いです。その時に一定のお金が入り続けるのは、ありがたいんだと思います。

 死ぬまでもらいつつけることができる公的年金の有難味は、こういう点にあるということを再認識したいものですね。

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2017年8月11日 (金)

AIは公認会計士の仕事を奪うのか

 8月10日の「羽鳥慎一モーニングショー」の「そもそも総研」のコーナーで、「AIに仕事を奪われる?」という番組があり、日本公認会計士協会の手塚常務理事の映像コメントが出ておりました。元ネタは、オックスフォード大学・野村総研のAIの発展で無くなる仕事という調査レポートです。もう、出てから1年は経ちますけど。

 番組では、「監査は、判断をする仕事なので、証拠を集めるプロセスがAI化されることはあっても、監査という仕事はなくならない」という雰囲気で放映されました。これは、事前にIT委員会で常務理事がこんな方向性で話そうと思っているんですよ、と言っていた通りのきれいなコメント。テレビに取材って、先方の意図と合わないと強引な編集されたりして、嫌な思いや最悪の場合、「なんでそんな発言したんだ」と周囲から怒られる羽目になるんですが、手塚常務理事、お見事でした。私も出席しているIT委員会の担当常務理事なので、ちょっと安心した次第。

 実は、番組でも、当意即妙の対応が求められるアナウンサーとかタレント、そのほかコミュニケーションが必要とされる仕事は残るというコンセプトでまとめていたので、「判断があるから仕事は変わっても消えることはない」という発言が生かされたのだと思います。

 という番組の放映があったその日に東芝の財務諸表に対するPwCあらた監査法人の限定付き適正意見の公表があったわけですが、あそこでの限定付き意見の論拠を読むと、つくづく監査って判断の業務だと思います。監査計画の立案プロセスでリスク判断の資料収集やその分析、あるいは判断の基礎となる証拠収集の一部は、AIで集めることで質が上がりますが、最後の判断は人間なのだと思います。そして、今回のPwCあらた監査法人の場合、おそらくは関係省庁などとの調整なども経て、落としどころ探しの結果としての「限定付き適正意見」だったのだと推測しています。公認会計士の仕事は、なくなることはないと確信する次第です。

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