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2024年1月14日 (日)

「もはや戦後ではない」の真実

 今、小峰隆夫著「私が見てきた日本経済」(日本経済新聞出版)を読んでいるのですが、その中で、昭和31年の経済白書の「もはや戦後ではない」という経済に関心のない人でも知っているフレーズについて、経済白書に実際に当たってみたという話が載っていました。引用するとこんな雰囲気です。
 
 「この『もはや戦後ではない』という言葉は、「もう戦後から復興するという時代は終わった。これから新しい時代に入っていくのだ」という時代の雰囲気を象徴する言葉として使われることが多い。
 (中略)
 さて、原典に当たってみると、有名な『もはや戦後ではない』という言葉が登場する部分は次のようになっている。『戦後日本経済の回復の速やかさには誠に万人の意表外に出るものがあった。それは日本国民の勤勉な努力によって培われ、世界情勢の好都合な発展によって育まれた。しかし、敗戦によって落ち込んだ谷が深かったという事実そのものが、その谷からはい上がるスピードを速やからしめたという事情も忘れることはできない。経済の浮揚力には事欠かなかった。(中略)もはや戦後ではない。我々はいまや異なった事態に当面しようとしている。今後の成長は近代化によって支えられる。そして近代化の進歩も速やかにしてかつ安定的な経済の成長によって初めて可能となるのである。』
 つまり、白書は「これから新しい成長が始まる」という希望を述べているのではなく、これまでの成長を支えてきた復興需要というエンジンがなくなるのだから、『これからは厳しい時代に入る』と言っているのだ。そしてその見通しは全く外れた。」
 
 経済白書は、戦争が終わって11年、ベビーブームもあり、朝鮮戦争もあったりという中、焼け野原から立ち上がるという莫大な需要による経済成長は終わったわけで、これからは、違う次元で成長を目指さないといけないからたいへんだという見通しを述べたつもりだったのですね。白書が出た昭和31年はなべ底不況になっているので、その原因を「もはや戦後ではない」に求めたのかもしれません。ところが、「もはや戦後ではない」というキャッチーなフレーズだけが独り歩きをし、翌年からは42か月間続く岩戸景気と呼ばれる好景気、あるいは昭和34年の皇太子殿下のご成婚パレードの放送を機に、テレビの普及が全国的に一気に広まるといった経済・社会の中で、「新しい、明るい時代に入ったのだ」という意味合いで使われるようになったことがわかります。
 
 原典に当たるというのは、大事なのだということをあらためて感じた次第です。

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