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2018年10月19日 (金)

成年後見人制度

 この制度は、人の意思能力が低い状態が続いているような場合、例えば、高齢者が認知症を発症した場合や知的障害者などが法律行為を行う場合に、本人の判断を後見人が補うことによって、本人を法律的に支援するための制度とされています。以前、税理士会で研修を受けた際には、昔の禁治産、準禁治産制度と比較して、「あなたは、法的には無能力者ですとしてしまうのではなく、判断力を補ってあげて、法律行為ができるようにする制度です。」という説明を受けたのを記憶しています。より多くの人が自立できるようにする愛のある制度趣旨なんだと思っています。
 
 ところが税理士など成年後見人としばしば関わる業界からはものすごく評判が悪いのが成年後見人制度だったりします。というのは、成年後見人は、家庭裁判所への報告義務があるようなのですが、そのため、極力支出を避ける方向で動くことがあります。例えば、高齢になったから家をリフォームしたいという話が出ても、「その工事をしなくても家に住み続けられるでしょう」「被後見人だけでなく、その配偶者や子供も恩恵を受けますよね」みたいなことを言われ、家族としては、自分たちの贅沢のために被後見人の財産を盗むかのように見られる気がして、たいへん嫌な思いをするというのです。
 
 私も以前、相続に際して、アルツハイマーを発症した母が被後見人、息子さんが後見人になって、そこに成年後見監督人の司法書士さんが付いた事例に関わりました。その息子さんから「母の施設の入所費用って、母の通帳から引き出していいんですよね」と聞かれたことがあります。引き出せて当たり前ですよね。でも、それを躊躇するような体験をしたから、何でも不安になってしまっていたわけです。
 
 さらに被後見人がアパートなど事業用不動産を持っていた場合、必要なタイミングで外壁塗装や畳の部屋をフローリングにするリフォームとかをしてくれるのか?という点では極めて疑問を感じます。「こうした工事を敢えてしなくても、家賃を引き下げればまだ貸せる」みたいな判断をされたら、アパートが朽ちてしまったり、入居者の質が変わったりすることが想定できます。
 
 あるいは、相続人の中に知的障害者の方がいて、遺産分割に当たって、成年後見人が付いた事例があったとします。成年後見人から、アパートの管理は大変なので、金銭で分割してください、なんて言われたら、売る必要もないアパートを売ることになるかもしれません。アパートの管理が大変なのは、被後見人にとって?それとも成年後見人にとって?などと勘ぐる人も出てくるかもしれません。また、そのアパートがあるから被後見人の収入が確保できるかもしれないのに売ってしまえば、その売却代金の切り崩しで生活していくようになってしまいます。しかし、金銭しか持っていなければ、店子が埋まらないだの大規模修繕にお金がかかるだのといった悩みも生じません。これをお読みのあなたならどうする?というのを成年後見人に悩んでもらう必要があるのでしょうし、それだけの報酬を払うべきなのでしょうね。現在の世間相場では、月額3~5万円と言われています。これでは、預金通帳を預かっていて、必要なお金を引き出してあげることと、家庭裁判所に報告書類を作るだけしかできません。
 
 「本人の判断を後見人が補うことによって、本人を法律的に支援するための制度」という制度の趣旨が生きるような成年後見人制度の運用がなされることを期待する次第です。そのためには、成年後見人が被後見人に代わってアパートの維持・補修などを安心してできるような裁判所側の監督基準のようなものも変わっていかないといけないのかもしれません。

 

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