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2017年8月29日 (火)

スキャナ保存導入は、なぜ進まない

 平成27年度、28年度改正で保存要件が緩和され、スマホ撮影保存まで認められたスキャナ保存制度ですが、爆発的には活用されていない印象です。平成27年度の申請件数を見れば、平成27年度の要件緩和を受けて、だいぶ増えたことがわかります。何しろ、スキャナ保存制度がスタートしてから10年間の累積申請件数152件を上回る申請が施行後の半年で申請されたわけですから。
 
 とはいえ、あちこちの企業が導入を開始したとも思えません。スキャナ保存機器を販売している会社がセミナーを開いて、導入を検討している会社を懸命に発掘しているという状況であり、ユーザーが販売会社に飛び込んでくるようでもないし、私のようなスキャナ保存に関する本を書いている公認会計士・税理士に導入上のコンサルをしてほしいという見積依頼1件すらありません。
 
 なぜでしょう。その答えの1つが日本CFO協会のサイトの情報から見て取れたので、ご報告します。「経理・財務部門の電子化・デジタル化に向けた現状と課題」というページですが、領収書電子化による全般的なメリットを感じるか?という質問に「とても感じる」23%、「感じる」60%という実態調査の結果が表示されています。ところが、経費精算の領収書電子化について導入意向はあるか?という質問には、導入済み、導入中が合わせて10%、導入計画ありが36%、導入計画なしが54%となっているのです。
 
 実態調査では、その後の質問で、スキャナ保存制度の制度要件が厳しいからだという結論を導き出しています。しかし、その中の一部は、私の書いた書籍を読めば、解決するようなこともたくさんあるし、私の本を読まないまでも、本気で導入を検討すれば解決するようなものもあります。ということは、私は、「そもそも真剣に考えていないから」なのではないかと想像しています。その背景には、「紙の書類を破棄することへの本能的不安があるから」なのではないでしょうか。そもそも総務や経理の方々は、慎重な方が多く、こうした職種にとっては好ましい性格なのかもしれません。しかし、企業の業務を変革し、効率化を図ろうという姿勢は、薄くなってしまう弱点にもつながるのではないかと。
 
 私は、スキャナ保存制度の話をする際には、「規制緩和の要望を受けて、2年連続で要件緩和が行われた以上、ボールは国税庁から民間サイドに投げられたんです。投げられたボールを手にしたままにするのか、それを業務改革という形で使うのかは、民間サイド次第なんです。」という話をすることがあります。労働人口が減りつつある中、求人もなかなか難しいと思います。それであれば、量より質、労働生産性のアップで業務量をこなしていくしかないと思います。こうした観点で、トップダウンでスキャナ保存導入の意思決定が必要ではないかと思う次第です。

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2017年8月26日 (土)

起業セミナーって、おかしくない?

 Twitterで「起業女子で月1万以上稼げてるのは全体の2割」という話が出ており、頻繁に起業セミナーに通っている女子は給料をつぎ込んでいる状況だが、副業を勧めるセミナーの講師は、収入が増えました・・・という話が紹介されておりました。弱者を食い物にしている感が無きにしもあらず。

 女性に限らず、また、会社員の副業としての起業に限らず、本当に起業する人というのは、自分へのニーズがあっていつの間にか起業していたり、「これをやれないなら今の仕事辞めてやる」みたいな勢いで始めるのであって、起業ってセミナー通って始めるものではないと思います。「これからは副業をもって豊かでキラキラした人生を」みたいなセミナーを聞いて、じゃあ、やってみようか、みたいなことでうまくいくとは思えません。

 起業した方々がお客様である税理士としては、起業というのは、こうした勢いで起業、自発的に起業するもので、セミナーを聞いてやるものじゃないという持論です。それで、ふと思い出したのが、十何年か前に関東経済産業局主催の起業の集いみたいなイベントで、パネルの司会進行役を引き受けて失敗したこと。

 パネラーは、女性起業家3人。みなさん、パワフルな方で、「会社を立ち上げちゃってから経理とかわかっていないことに気づいた!」みたいな話を披露してくれました。で、その勢いに煽られて、パネラーの方々に「起業セミナーとか開業講座みたいなものに行ってから起業しました?」という愚問をしてしまいました。当然ながらパネラーはそんなセミナーに行っているわけはなく、会場に向かって「本日お越しの皆様は慎重過ぎるようですね」ってフォローにならない言い訳をした私。

 でも、その時の経済産業局の人は中小企業施策の資料とかが出るとその案内をメールしてくれていたので、彼らにとっても頷ける話だったのかもしれません。ただ、あれ以降、関東経済産業局のイベントへのお呼びはかかっておりません。ま、当然ですね。

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2017年8月15日 (火)

公的年金制度のありがたさ

 ネットで見かけたニュースで、年金が11万円しかもらえないので、いったん隠居したが再び働きだして、3か所掛け持ちで苦労しているという69歳の人の記事が出ていました。「年金は少なくて、日本の社会保障はひどいね」と読者に伝えたいという記事に思えました。

 しかし、この方についていえば、そもそも65歳で年金を受給しはじめる際に11万円ってわかっていたはず。それで十分な暮らしができるかどうか、判断できたはず。実は、公的年金制度は、70歳までの受給繰り下げの制度があります。70歳からの受給開始すれば42%アップになり、金額にすれば約15万円の年金受給額になったわけです。月額4万円、年間50万円近く違うなら、65歳からの5年間、何とか仕事を続けて、貯金を取り崩してでも15万円の年金をもらうようにするという手もあったと思います。60歳台は、働けれるけれど、70歳代、80歳代になったら難しいわけですから。

 この年金受給の繰り下げ制度って、意外と理解されていないし、活用されていないと思います。という話をすると、「平均寿命とか考えると、早くもらわないと損しちゃう」とか言う方が多いです。しかし、平均寿命って、今、生まれた赤ちゃんが平均で何歳まで生きるか?という期待値です。当然、65歳まで無事に生きた人の平均余命は、平均寿命より長い。男性でも85歳とか90歳まで生きちゃうかもという前提で老後設計をすべきです。女性の場合だと、65歳の段階で足腰に問題なかったら、90歳かと95歳まで生きるかも、80歳の段階で足腰に問題なかったら100歳まで生きるかも、くらいの老後設計が必要なのではないでしょうか。

 という観点では、死ぬまで受給できる公的年金は「長生きリスク」に備える保険。保険というと、死んだり、病気した時の保障を思い浮かべますが、長生きしすぎることもリスクです。だって、90歳になったら、さすがに働けないし、うっかりすると子どもが先に死んでいるかもしれないし、昨今、未婚のままの一人暮らしの人も多いです。その時に一定のお金が入り続けるのは、ありがたいんだと思います。

 死ぬまでもらいつつけることができる公的年金の有難味は、こういう点にあるということを再認識したいものですね。

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2017年8月11日 (金)

AIは公認会計士の仕事を奪うのか

 8月10日の「羽鳥慎一モーニングショー」の「そもそも総研」のコーナーで、「AIに仕事を奪われる?」という番組があり、日本公認会計士協会の手塚常務理事の映像コメントが出ておりました。元ネタは、オックスフォード大学・野村総研のAIの発展で無くなる仕事という調査レポートです。もう、出てから1年は経ちますけど。

 番組では、「監査は、判断をする仕事なので、証拠を集めるプロセスがAI化されることはあっても、監査という仕事はなくならない」という雰囲気で放映されました。これは、事前にIT委員会で常務理事がこんな方向性で話そうと思っているんですよ、と言っていた通りのきれいなコメント。テレビに取材って、先方の意図と合わないと強引な編集されたりして、嫌な思いや最悪の場合、「なんでそんな発言したんだ」と周囲から怒られる羽目になるんですが、手塚常務理事、お見事でした。私も出席しているIT委員会の担当常務理事なので、ちょっと安心した次第。

 実は、番組でも、当意即妙の対応が求められるアナウンサーとかタレント、そのほかコミュニケーションが必要とされる仕事は残るというコンセプトでまとめていたので、「判断があるから仕事は変わっても消えることはない」という発言が生かされたのだと思います。

 という番組の放映があったその日に東芝の財務諸表に対するPwCあらた監査法人の限定付き適正意見の公表があったわけですが、あそこでの限定付き意見の論拠を読むと、つくづく監査って判断の業務だと思います。監査計画の立案プロセスでリスク判断の資料収集やその分析、あるいは判断の基礎となる証拠収集の一部は、AIで集めることで質が上がりますが、最後の判断は人間なのだと思います。そして、今回のPwCあらた監査法人の場合、おそらくは関係省庁などとの調整なども経て、落としどころ探しの結果としての「限定付き適正意見」だったのだと推測しています。公認会計士の仕事は、なくなることはないと確信する次第です。

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2017年8月 9日 (水)

企業の実力は経営者の本気度で変わる

 コンビニエンスストアのレジには、年齢キーがついているというのは良く知られた情報だと思います。小学生以下を示す「12」キーから50歳以上を示す「50」キーまでが男女別に並んでいるようです。このキーを押すことで、どういう年齢層にどういう商品が売れたかを把握できるし、時間帯別の顧客の年齢層が把握できるわけです。日経ビジネスオンラインの記事によれば、ファミリーマートは、この年齢キーを廃止するとのこと。
 
 というのは、このキーは、忙しくなってくると一番押しやすいところを押す、みたいなことをやって不正確な運用になってしまい、そうでなくても複雑なコンビニの業務を複雑にしてしまうからだという理由のようです。
 
 「きちんと押してくれないからやめる」ことも現場の実態に合わせた1つの経営です。しかし、私の持っている情報によれば、この年齢キーをきちんと押す度合いは、セブンとファミマ、ローソンでは違いがあるのだそうです。セブンは、きっちり押しており、ファミマ、ローソンはいい加減だという話。逆に言えば、セブンは、このデータをきっちり分析しているから、いい加減な押し方をしている店が浮き彫りになり、そこの店長がエリアマネジャーに怒られる、店長が店員さんに徹底を周知する・・・という流れがあるのだということになります。これがセブンイレブンの売上の原動力の1つだとしたら、ファミマのキー廃止は、大事なデータの入手手法を自ら捨てることになります。
 
 「この年齢キーは、ちゃんと押せ。これが当社の成長の源なのだ」と熱く訴え、「混雑時間帯に客が待っていようと、ちゃんと押すのに0.2秒もかからない。ちゃんとやれ」と言うかどうか。実は、それが年齢キーの精度を決めるのです。せっかく得られるデータを本気で使うかどうか、経営陣の執念や本気度が企業の実力を決めるのではないでしょうか。人工知能やビッグデータの時代です。こうしたデータの収集を放棄するファミリーマートに疑問を感じた次第です。

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2017年8月 3日 (木)

セルフメディケーション税制(医療費控除)

セルフメディケーション税制の情報が国税庁ホームページに出ました。こんな様式に記入するイメージですよ、という段階でしょうか。

 
健康の保持増進及び疾病の予防への取組が必要なのが留意点です。かつ、「本人」の取り組みなので、医療費控除をセルフメディケーション税制で取るための申告をする本人が・・・なので、人間ドックを世帯主しかやっていなければ、世帯主の申告でセルフメディケーション税制での医療費控除を取るしかないです。このあたり、従来の医療費控除より、融通が利かないと言えます。

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2017年8月 1日 (火)

高負担&高福祉の社会

 朝日新聞の報道によると(記事はこちら)、民進党の党首選挙に当たり、前原誠司さんは、党のマニフェスト案として「増税で段階的に年間10兆~30兆円の財源をあつめ、保育や教育、職業訓練、介護など幅広い世代にむけた生活保障を実現する。」という構想を持っているようです。
 
 これは画期的だと思います。日本の政治や行政には無駄があって、それを解消すれば、増税なんかしなくても済む。「増税の前にすることがある」と散々言ってきた旧民主党が事業仕分けをすれば、「2番ではダメなんですか」という名言は生みつつも、成果は生まれなかったことは皆さん、ご承知のところ。
 
 これに対して、年間10兆円から30兆円の財源を集めて、厚い福祉を提供しましょうというのは、これまでの野党の主張にはなかったものです。増税は反対、でももっと福祉をというあり得ない主張から、現実的な主張になりました。消費税1ポイントで2.5兆円の税収がアップすると言われています。すでに10%への増税は決まっており、その使途も決まっているので、新しいマニフェスト(案)は、消費税だけで財源を集めるならば、14%から22%の消費税率にする代わりに、高校も無償化かもしれないし、大学を出ても就職をうまく見つけられなかったら職業訓練が提供され、子育てのための支援により保育園の順番待ちなど解消されるのかもしれません。
 
 これは、消費税率25%の北欧諸国などと共通する「高負担&高福祉」という主張だということができるでしょう。アメリカなどは、低負担&低福祉。健康保険の皆保険を狙ったオバマ・ケアにも反対の声があるくらい。日本の現状は、中負担&中福祉でしょうか。
 
 対する野党第一党が「高負担&高福祉」で行きたいと言えば、初めて経済政策論争が成立することになります。今までは、「増税反対、福祉にお金を回せ」で、「低負担&高福祉」というあり得ない主張でしたから。念のため、説明しておくと、我が国の防衛費が約5兆円。国、年金特別会計、地方自治体などの合計での社会保障費は、110兆円を超え、高齢者層の増加という自然増で、毎年1兆円前後増え続けています。防衛費を減らして、社会保障費の増加を賄おうとしたら、5年くらいで、防衛費はゼロとなって、自衛隊員の給与も払えなくなります。こういう現実を前に、日本は、どうするべきか。
 
 昔の社会党とかは、良かったんです。高度経済成長期は、経済とか財政を心配する必要がなかったから、単純に佐藤栄作さんや田中角栄さんを批判していれば、党の存在意義が保てました。しかし、少子高齢化の今日の日本では、現実を見据えた野党というものが求められます。「高負担&高福祉」が国民の支持を集められるかどうかはわかりませんが(そもそも民進党のマニフェストになるかどうかもわからない)、1つの対立軸として、こうした主張があることは、国民の選択の幅を拡げてくれると思った次第です。

 

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