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2015年7月 1日 (水)

監査役の権限を会計監査に限定するべきか

 平成27年5月1日施行の改正会社法により、監査の範囲が会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社は、その旨を登記しなければならなくなりました。監査役の監査の範囲を限定することができるのは、株式の全部に譲渡制限があり、かつ、資本金の額が1億円以下の株式会社です。この登記には、1万円の登録免許税がかかります。
 しかし、1万円がかかるかどうか以上にきちんと検討してからこの登記を実施するべきなのだと考えています。監査役の監査の範囲を会計に限定すると、すなわち業務監査は範囲外になってしまいますので、実質的に監査役の機能が極めて限定されてしまいます。その結果、監査役による取締役の監督が期待できないため、株主の権限が拡大するという形でガバナンスのバランスがとられることになっています。そのため、監査役の監査の範囲を限定すると、以下のような部分で株主が権限が強化され、経営に関与してくることになります。
(1) 取締役の職務執行を調査するための権限強化
 株主は、裁判所の許可を得ずに、取締役会議事録を閲覧することができます(会371②③)。また、取締役が、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合には、監査役ではなく、株主に報告しなければいけません(会357①)。
(2) 取締役の違法行為を防止するための権限強化
 株主は、取締役が会社の目的外行為や法令・定款違反行為をした場合、並びにそのおそれがある場合には、取締役会の招集を請求することができます(会367③、366③)。そのうえ、これらの取締役会に出席して意見を述べることもできます(会367④)。
 平成18年4月30日の会社法施行日以前から存在する小会社の定款は、監査役の権限を会計に限定する旨の定めがあるものとみなす(会社法整備法53)とされていました。そのため、監査役の監査の範囲を会計監査に限定したくなければ、定款の変更が必要であり、その際には、監査役の任期はいったん終了となるため、新たに監査役を選任し直す決議が必要となります。そのため、今回の会計監査に限定する登記をするにしてもひと手間、限定しないのでも定款変更と監査役選任が必要ということになります。株主=取締役であれば関係ないのですが、取締役になっていないが、議決権の5%を持っている親戚がいるといった会社では、監査役の監査の範囲の限定をするかしないかは、重大な問題だと思われます。

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