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2014年10月 6日 (月)

社会保険の被扶養者の判定について

 家内の友人から夫の会社の健保組合から「社会保険の被扶養者になれません」という連絡が来て困っているという話が飛び込んできました。いわゆる130万円基準の話です。130万円を超えるパート収入があったら,社会保険の被扶養者にはなれません。じゃ,130万円を超える個人事業者収入(売上高)があったらどうなのよ?というお話。

 確定申告書のコピー,青色決算書のコピーを提出したが,収入が130万円を超えていると言われてしまったというのですね。そこで,下記のような文書を提出してみたら?と文章を作ってみました。
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「健康保険の被扶養者の判定における生計維持の基準について」

 今般,収入が130万円を超えるということで,被扶養者にはなれず,国民健康保険に加入することになるという見解が示されましたが,下記の事項を検討のうえ,再度,ご検討をお願い申し上げます。

 一般に「年間収入が130万円」というのが生計維持の基準とされています。この「年間収入」とはどのように定義されるかが曖昧で,各健康保険組合等で判断が異なるように思います。
 これについて,健康保険法(昭52.4.6 保発第9号厚生省保険局長通知)では,次のように書かれていると認識しております。

"収入がある者についての被扶養者の認定について健康保険法第一条第二項各号に規定する被扶養者の認定要件のうち「主トシテ其ノ被保険者ニ依リ生計ヲ維持スルモノ」に該当するか否かの判定は、専らその者の収入及び被保険者との関連における生活の実態を勘案して、保険者が行う取扱いとされている。"

 これによれば,収入だけでなく,被保険者との関連における生活の実態を勘案するとされています。たとえば,被扶養者の認定の対象者が個人事業を営んでおり,収入(商品の売上高)が500万円あってもその商品の仕入れに450万円を要しているのであれば,差引50万円の所得では生活ができず,被保険者に扶養されることになります。したがって,個人事業者の判定における「年間収入」とは,売上高に相当する金額ではなく,経費等を控除した後の所得によることが望ましいと思われます。
 実際に,パナソニック健保では,次のように判断しております。
https://phio.panasonic.co.jp/hoken/shikumi/kazoku_kanyuu/sikakucheck.htm

パナソニック健保の取扱い
総収入-(売上原価+※必要経費)+減価償却費
※確定申告の際、必要経費として認められるものに限る(青色申告特別控除は必要経費として取扱いません)
    上記基準を2007年9月1日より適用する。
    異動届に直近の確定申告書・損益計算書(収支計算書)の写しを添付の上ご提出願います。
    現金支出のない減価償却費については、必要経費として取扱いません。
    事情(所得38万円未満等)で確定申告していない方は、個人で記録している帳簿等を事業主印押印後ご提出願います。
    事業初年度者は各自で見込み(売上・経費内訳)を別紙にご記入の上、事業主印押印後ご提出願います。

 この基準によれば,今回の場合も130万円にはならないと判断されることになります。
 このように健康保険法上の解釈上も,扶養の実態上も,そして他社の健保組合での取り扱い上でも被扶養者とすることが望ましいと考えられます。

 以上,宜しく再検討のほど,お願い申し上げます。
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 ところが駄目だったというのです。他社の健保組合がどういう判断をしているかとは関係なく当社の健保組合は,個人事業者も売上高130万円で判断しているからと言うのだそうです。そんなの,理屈になっていますか?

 第1にパナソニック健保と判断基準が違ったら,国民の中での不平等が生じます。だから,本来は,厚生労働省がパナソニック健保のような基準を明示しなければいけないのだと思います。しかし,それをしていないという怠慢。

 第2に実質的に扶養されている家族が被扶養者になれないという不合理があります。文書の中にも例示しましたが,物品販売業だったらどうするのでしょうか。450万円の仕入れをして,それを500万円で売っている場合に,50万円以下の所得から国民年金保険料と健康保険料,介護保険料合わせて20万円ほどを納めろというのでしょうか。

 実は,これに対する反論も考えられないわけではありません。「パート労働者も130万円の収入に対して,65万円とかの経費が掛かっていて(給与所得控除),実質の所得は65万円なんですよ。だから個人事業者も同じに考えるんです。」というもの。しかし,給与所得は,基本的な必要経費は雇用者が負担するから給与所得です。会社までの通勤交通費も支給,会社内で作業服を着る必要があればそれも支給,事務用品も机も。個人事業者は,全部自分で支出して,経費としなければなりません。同じなはずがない。いや,スーツ代,靴代,化粧品代など必要経費があって・・・というのが給与所得控除。個人事業者の場合,これも業務関連性があれば,必要経費にしていますが,こんなもの以外に個人事業者は,事務用品や移動のための交通費などがかかるわけです。また,そもそも仕入代が存在する小売業,卸売業をしている個人事業者もいる。給与所得者に赤字はないけれど,個人事業者には赤字もありうる。こうしたリスク負担の中で,やっている者と給与所得者を一律に「収入金額」で判断することはできないはずです。

 そういう当たり前のことが判断できないその会社の社会保険担当の人がアホだということでもあり,また,パナソニック健保はさすがだと思い,さらにこんなこと各健保の判断に委ねている厚生労働省は,仕事していないと思うわけです。こうやって1つ1つ国民の信頼を失うようなことをしているから,日本国民の心は,政治や行政から離れていくんではないかと思うのであります。

 さらに言えば,サラリーマンの妻が国民年金保険料を納めないでよい,すなわち第3号被保険者なんて制度を存続させていることも厚生労働省の罪ですよ。これすら改革への準備もせずに,何が「税と社会保障一体の改革」ですか。第3号被保険者という概念がなければ,今回の問題だって,年間5万円だから諦めようよ・・・とも言えるわけです。厚生労働省は,国税庁(財務省)に比べて,こういう部分の感覚が甘すぎます。国税庁は,憲法の中に租税法律主義とか法の下の平等とか定められているから,国として国民の懐に手を突っ込むことについて,丁寧に物事を詰めます。しかし,厚生労働省は,「保険」という言葉に自ら甘え,「保険料を払ったって,将来返ってくるんだから,国民の懐に手を突っ込んでいるわけではない」とか思っているのではないでしょうか?

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