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2014年3月 9日 (日)

相続税の申告は30万円でやる時代?

 3月8日の日経夕刊のトップ記事が相続税を専門にする税理士法人では相続税の申告を基本料金30万円からやっているという記事が出ました。この記事の怖いところは,あくまで基本料金であって,相続人が多くて,各自の意見を聞いていると分割協議書の作成まで調整のための時間を要したり,不動産をたくさん所有していてその評価に手間取ったりする場合の料金が書いていないこと。

 私のところで相続税の申告をすると,かなり安くて50万円から高いと200万円といった雰囲気になります。遺産総額20億円みたいな世界で,かつ相続人がうっかりすると弁護士入れて分割協議をしそうだ・・・みたいな事例では「評価も大変だし,分割で揉めると申告期限内に申告書が出せないかもしれないし,1千万円覚悟しておいてもらう方がよいかもしれません」といった話をしたこともあります。

 じゃあ,個人事務所は高くて,相続専門の税理士法人は安いのかと言えば,そんなことはないと思います。実はうちの事務所の基本料金も30万円だったりします。ただ,これで終わるとすれば,こんな事例です。

 お父さんが既に亡くなっていて,お母さんを亡くした一人っ子の相続。この場合,平成27年からは基礎控除が3600万円です。亡くなったお母さんと相続人の子どもは都内の一軒家に住んでいて,相続後もこの家に住み続けるとします。この不動産の時価が3千万円,預貯金で1千万円だとすれば,相続税がかかりそうに見えます。しかし,相続人がその一軒家に住み続けるような場合などでは,自宅の土地の評価が2千万円ほど落ちることになります。小規模宅地の減額という制度があり,330㎡までの土地であれば路線価による評価の8割を減額できますので,この場合なら,申告は必要だけど相続税はかかりません。これなら,遺産分割の問題もないし,評価もかなり大雑把でもそもそも相続税がかからないのだから,安心。とりあえず申告書を作って出しさえすればいい。と言っても,相続税の申告書のページ数でいえば,10数ページ,添付書類も含めれば,20数枚の書類を提出することになり,30万円と言うのは時間相応の値段です。

 昨今の家族構成では,一人っ子も多い世代になってきており,こういう簡単な申告も増えてくるのだろうと思います。また,今年までの基礎控除5千万円からの状態に比較して,来年からは上記のような「かんたん相続」が増えてくるのでしょう。税理士法人はそういう案件(この案件こそ数が多い)を狙っているのかと思います。

 そして,従来から相続対策が必要だったような複雑な案件をお持ちの方は,30万円でできるなどと夢にも思わない方がよいです。これは,私のところでも30万円ではできませんし,大手に頼んでも同じくコストがかさみます。単純事例と違って,スタッフがホイホイとこなせない分だけ,オプション料金は高いのではないかと想像する次第。

 相続は,亡くなった方が所有していた財産だけでなく,その想いや歴史を引き継ぐ手続であり,それを進める際のパートナー選びを「安いから」でしてしまってよいのだろうかと思う次第です。ここ一番の大事な時に着る背広をロードサイドの紳士服チェーンで買うのか,オーダーメイドで作るのか?という選択と似ているのではないかと考える次第です。

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