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2013年12月 6日 (金)

システム開発の観点から見た軽減税率

 本日の日経夕刊「十字路」というコラムに「軽減税率,財務省のリスク」という記事が出ていた(執筆子:九楽)。財務省が軽減税率の導入には,法律の成立・公布から施行までに1年半程度は必要と主張し始めて,公明党が慌てて首相に導入の決断を迫ったと解説している。しかし,最後に「施行まで1年半というのは論拠が乏しい」と書いている。

 申し訳ないが,この九楽氏,システムの世界を知らないように思う。軽減税率で品目によって10%と軽減税率(たとえば8%)の2種類が使われるのであれば,販売管理システムも購買管理システムも経理システムもレジスターも,すべてシステムの更新が必要である。

 たとえば,薬局の売上のように通常の市販薬や雑貨は5%,処方箋薬は非課税といった2種類の品目を扱うシステムというのはないわけではない。しかし,それであっても,非課税品目の方は消費税がかからないので,この消費税額のトータル金額をレジシートに印字するといった機能はないはずである。また,レジのデータを受け取る販売管理システム側にも10%税率品,軽減税率品,非課税品の3種類の消費税処理をする機能はない。これは新たにシステム開発しなければならないのである。

 ましてや,一般の食品メーカーなどの販売管理システムには,「この商品は消費税の扱いはこうだ」といった区分をする商品マスターもなければ,集計するプログラムもない。それなのに,1年半後から米には8%の消費税で,残りの食品は10%の消費税などと決められたら,慌ててシステム開発をしなければならない。問屋に対して発行する請求書の中でも10%品の消費税合計,8%品の消費税合計といった書式にしなければならない。
 システム開発は,どういう仕組みのシステムにするかの要件定義からスタートし,その仕様をどういう仕組みで実現するかの基本設計,出力帳票のデザインなども含めた詳細設計を経た上で,プログラミングが行われる。そして,テスト作業。そのうえで,実際に使う人にわかるようなマニュアルの作成や使用説明会の開催などを経なければ,新しいシステムを動かすことはできない。これらのプロセスに1年半という時間は決して多くはない。ましてや,多くの事業者から軽減税率対応のシステム改変してくれと言う注文がシステム開発会社に集中したら,開発能力を超えてしまって,受注と同時に着手はできないといったことも起こりうる。そうした点からも1年半は短いとしか言いようがない。

 すなわち,軽減税率の問題は,施行までどれくらいの日程を用意すればよいのかという議論になった瞬間,税制の話ではなく,システム開発の議論になってしまうのである。日経の九楽氏は,申し訳ないがシステム音痴なのであろう。残念なことである。また,公明党も同じ程度の素養であるということも残念であり,そして,その党が与党であるという点で日本人は不幸であると思った。軽減税率の不合理さは,これまでも解説してきたつもりであるが,そういう論点以外にも軽減税率には問題が山積ということになる。

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