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2012年11月27日 (火)

電子債権

 日経新聞のトップに電子債権の利用が広がるという記事が出ていました。電子記録債権法という法律を活用すると、従来の手形を電子的なものに移行できるという仕組みです。すでに三菱東京UFJ銀行は、「電子手形」という愛称を使って同行のトップ企業に振り出しを認めるような形で動いており、みずほ、三井住友も手形の代用をメインの目的かどうかは別として運用を始めています。記事によれば、トヨタ自動車も使い始めているそうなので、自動車産業は裾野が広いので多くの企業が利用し始めているのでしょう。また、全銀協では「でんさいネット」という仕組みを開発中で、順調に進めば今年度末までに運用開始を見込んでいるということです。こうした実際の動きと近い将来の大きな動きを織り込んで作られたトップ記事なのかな?と思います。

 手形が電子化されると、従来、裏書をして譲渡したりする場合も手形の券面額で譲渡なので、不自由な面がありましたが、電子債権だと自由に分割して譲渡できます。そのため、100万円の「手形」をもらったら、外注先A社の代金30万円のために譲渡し、B社の代金50万円のために譲渡し、残り20万円は、満期まで持っていて振り込まれるのを待つという使い方ができます。これだけでも手形の素晴らしい進化だと思います。

 なお、監査をするにあたっては、従来、手持ちの手形を実際に数える「手形実査」という手続を公認会計士はしてきました。今度は、売掛金などと同様に「残高確認」を実施するようになります。三菱東京UFJ銀行のシステムでは、それができるようになっていました。みずほや三井住友も同じようになっているのだと想像されますし、でんさいネットもより広い範囲でのインフラ的制度なので、運用開始時にそういった仕組みも搭載されているのでしょう。

 新しい金融インフラがスタートするわけで、うちの顧問先でお目にかかるのはいつになるのか、今から楽しみにしています。

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2012年11月20日 (火)

労働市場への素朴な疑問

 日本の賃金市場は歪んでいるような気がします。一流企業の初任給って、いくらくらいでしょうか。大卒で20万円ちょっと? でも、中小企業では、そこまでいかないことが多いでしょう。一流企業のほうが一生安泰で、かつ、給与が高くて、さらに社宅その他福利厚生が充実していたら、みんな一流企業に入りたいと思います。なんか変じゃないですか?

 みんなが就職したいという希望が多ければ、給与を下げても人が集まるはず。だから、イメージ形成のため、あえて社名を出しますが、日立製作所だったら、初任給12万円でも入社したいという人が集まりそうな気が。で、そこより規模が落ちるけど上場している岩崎通信機なら14万円くらい、で、中小企業は、18万円出さないと来てくれないかなぁ・・・というのであれば、社会のインフラを作りたいという理想に燃えた人が「最初は12万円の月給でも将来的には中小企業よりずっともらえるようになるだろう」と考えて、入社するかもしれません。そして、日立に入るほど優秀じゃないけど、安定した会社に入りたい人が14万円の初任給で我慢する。そして、いや、生活が大事なので将来はともかく今すぐに月給18万円がほしいという人が中堅企業に入社する。優秀な人でなくてもよいけど人を募集している中小企業は12万円かもしれませんが。そうなると、3か月で仕事が打ち切られるかもしれない派遣業の会社は、月給20万円くらい出さないと登録者が集まらず、中堅企業へ行ってしまうような気がします。しかし、そしたら企業への派遣料は20万円を明らかに超えることになります。そうなると、日立製作所は派遣会社に依頼するより、自分で14万円で雇用しちゃえばいいやという判断になりそうな気がします。もし、能力が伸びなかったら、昇給しなければいいのですから、終身雇用が半ば義務付けられているとはいえ企業への負担はそれほど大きくないような気がします。これで非正規雇用の問題は解決です。

 おそらく大企業の給与が高いのは、優秀な人材が採れないと困るからです。でも、それは、中小企業に行っちゃうのが困るからではなく、例えば日立なら、優秀な人材がソニーやパナソニックに行かれたら困るから、あるいは業種を超えて、新日鉄や三井化学に行かれると困るからということではないでしょうか。カルテルや談合はよくないことではありますが、優良企業が一斉に最低賃金レベルまで初任給を引き下げたら、上記の不安は杞憂に過ぎなくなります。

 なぜ、そういう労働市場になっていないのか?と言えば、おそらく労働組合が待遇改善を要求し、その要求にこたえられる大企業だけが給与水準を引き上げていったからだと思います。こういう市場の歪みを改善すれば、日本はよくなるような気がします。そんなラジカルな・・・と思われるかもしれませんが、例えば、あなたの息子さんが初任給12万円の三菱商事の内定と従業員数8名の零細会計事務所の初任給18万円の内定を取ってきたら、どちらへの就職を親として勧めますか? ね、優秀な人材は、給与を下げても大企業に集まるんだと思うのですよ。

 と書いたところで、大きな問題が。もし、日立が給与を12万円にしたら、優秀な新卒者は、アメリカでアップルや台湾の鴻海精密工業に行ってしまうのかもしれません。となると、上記のような話は、あまりにドメスティックに過ぎるのかな?と。海外の労働市場って、どうなっているのでしょうね。

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2012年11月11日 (日)

ベリファイ

 「ベリファイ」という言葉は、ご存知でしょうか? ITの世界では、複製したり、書き込んだりしたデータが元のデータと違っていないかどうかを検証するような行為をさします。しかし、経理の世界では、伝票から会計ソフトに入力した後で、入力ミスがないかどうかを確かめる行為をさします。うちの事務所で使っている会計ソフトでは、Aさんが入力した後で、Bさんが日付、借方コード、貸方コード、金額だけを入力するとシステム的に入力済みの元データとチェックして、違っていた時に知らせるという機能があり、これをベリファイと言っています。

 経理の作業としては、ベリファイをしなくても、勘定明細などを作成することで、異常点が出てくれば、結果として入力誤りに気付いて、訂正することも可能です。しかし、実際に入力しているスタッフに聞いてみると、入れた科目と金額に誤りがないことが先に確認できていると安心だし、結果として仕事が早いと言います。私自身は、大量の入力処理はしないので、そんなもんかなぁ?くらい思っていました。

 しかし、2~3か月前の日経Top Leader誌で堀場雅夫さんが書かれていたのだと思うのですが、堀場製作所では、伝票は、3人の経理職員に並行的に入力させて、違いがないかを確かめていると書かれていました。昔、経理作業が遅いので原因を調べたら、おかしな結果が出たときにどのデータを入力誤りしたのかを探すのに時間がかかっていたのだそうです。「そんなに入力ミスするものか?」と思って、堀場さん自身がやってみたら、やはりミスが出る。これはミスが出るものだと決めたうえで、対処を考えたのが、3人での並行入力なのでしょう。3人のうち、2人があっていれば、そちらが正しいとわかるわけですから。

 ベリファイというのは、人間の不完全性を前提とした優れた事務方法だと言えるわけです。ところが、ベリファイ機能は、一般に普及している会計ソフトにはありません。プロが使う税理士事務所のソフトには、必須なんだろうと思いますが、必ずしもすべてのソフトに用意されている機能ではないかもしれません。ITのプログラムのように基本的には誤動作がないはずの世界でもベリファイがあるのに、どうして人間の作業の結果にベリファイをしないのか、不思議でもありますね。

 ちなみに最近は、出納帳や証憑類から直接に会計への入力をする場合が増えています。この場合、「これが入力原票」といえる原票が不明確になるため、ベリファイはやりにくい、もしくは不可能です。「ミスの検証時間及び成果物の精度」と「伝票起票に要する時間及びベリファイの時間」を比較して、作業方法を選択していかないといけないのでしょうね。

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2012年11月 6日 (火)

政策を期待値で決めることの是非

 大飯原発の敷地を走る断層が活断層か否かの検討をしています。学者の間でも意見が分かれているようですが、仮に活断層だとして12万年に1度動くのか20万年に1回動くのかわかりませんが、ここからの1年で動く可能性はどれくらいなのでしょうか。10万分の1とかそういう確率かな?と思ったりします。そうすると、大飯原発が廃炉になるまで20年として、10万分の20、すなわち5000分の1くらいの確率で事故が起きるということになるのでしょうか。

 いざ、原発で事故が起きると大きな被害が出ます。福島ではどれくらいと見込まれているのでしょうか。風評被害から何から含めて大飯原発で事故が起きた時の損害額を仮に10兆円と見積もるとしましょう。そうすると、活断層が動くことによる損害の期待値は、10兆円に1/5000を乗じて、20億円ということになります。あくまで仮の数字による計算ですが。

 これに対して、大飯原発を止めることでの燃料費の増加、電力料金の増加、CO2の排出量の増加などを見積もると、これは止めれば100%発生ますが、おそらく50億、100億円というオーダーにはなると思います。ここから20年の話ですので。

 期待値で考えれば、大飯原発を稼働した時の損害と停止した時の損失とを比較すれば稼働し続けたほうが好ましいということが言えることになります。あくまで仮定の数値があっていればの話ですが。

 と書くと、おそらく期待値でそういう大事なことを決めるべきではないという意見が出てくるのだと思います。しかし、これ以外にどういう判断要素があるのかな?というのが私のわからないところです。「外出すると交通事故に遭う確率は家の中にいるより確実に高まる。だから外出はしません。」という引きこもりの人がいたら、「ばっかじゃない?」と思うはずです。家の中で火気を使うと火事の確率が高まるから、家での煮炊き、お風呂は使いませんという人がいても、ノイローゼに違いないと思うはずです。人間の行動は、何らかの形で期待値を利用しているはずで、船より飛行機のほうが事故の際の死亡率が高いとわかっていても、九州までフェリーで行くよりは飛行機で行く人のほうが多いはずです。それは明らかに時間コストが飛行機のほうが安いから。期待値として死ぬ確率は限りなく0に近いと踏んでいるわけです。もちろん九州に新幹線で行く人はいますが、これは時間コストより死ぬ確率のほうを大きいと判断する人の合理的な判断なのでしょう。

 結局、期待値以外に判断の基準がないのだとすれば、国の政策も期待値で決めるべきなのではないか、あるいはそれ以外に正しいといえる判断方法はないのではないか?という私の疑問です。この仮説が正しいとした場合には、そして、上記の仮定数値が誤りでない場合には、坂本龍一も大江健三郎も期待値の概念がない阿呆であるという結論になってしまう点で、非常に勇気のある判断になる点も悩ましいところなのですが。

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