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2012年8月26日 (日)

消費税を上げるだけでは駄目なんだ

 昨日8月25日の日経朝刊2面にあった「医療費、37.8兆円」という記事はショッキングでありました。なぜかというと、2011年度の概算医療費が前年比3.1%増えているという事実が書かれているからです。つまり、前年比1.1兆円も医療費が増えているのです。

 これって、消費税の0.5%分です。消費税の税収が約10兆円。税率を10%にする平成26年になっても20兆円しか入らないのに、そもそも医療費が38兆円近くもかかっているわけです。消費税を福祉目的税にするかどうか?などという議論なんか関係ないですね。2001年に30兆円だった医療費が2011年に38兆円。11年で8兆円増えるのだから、年間7千億円ずつ増えているわけです。3年に1度消費税の税率を1%引き上げないといけないわけです。

 さらに、2001年度には、70歳以上の医療費は、全体の38%でしたが、2011年度は45%まで高まっています。つまり、高齢者の増加によって医療費支出がどんどん増えているわけです。

 こうなると、消費税を上げて、税収を増やして、財政を健全化するのは単独では無理だということがわかります。結局、高齢者への支出をいかにして抑制するか。逆に言えば既得権に踏み込んだ改善をしなければ、つまり高齢者にとってみれば制度の改悪をしなければ、日本の未来はないのではないかと思うのです。選挙にももろに影響する高齢者への制度改悪を提案できる政治家こそが正しい政治家なのだと思います。「消費税をあげるしかない」とか「消費税なんか上げちゃだめだ」という矮小化した議論をしている政治家はいても、「消費税なんか上げるより高齢者福祉の削減に手を付けなきゃ」と主張する政治家は今のところいません。日本は、どうなってしまうのでしょうか。

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2012年8月23日 (木)

明治時代の原価計算

 本屋さんで会計書のコーナーを見ていたら、「長崎造船所原価計算生成史」という本が置いてありました。豊島先生という研究者が現在の三菱重工業株式会社長崎造船所の原価計算の生成過程を研究した内容をまとめた本です。
 
 400頁ほどの大著で研究書なので買う気はしませんでしたが、少し眺めてみました。そしたら、長崎造船所は、明治時代に外国人技師を招いて技術指導を受けながら動き出したものであり、原価計算も英語でなされていたのだそうです。明治時代の長崎の若者が造船所に就職してみたら、払出伝票や帳簿が英語で作られていたなんてのに直面した時の衝撃は、社内公用語が英語になると発表された時の楽天社員どころではなかっただろうと思います。マテリアルコストが材料費、レイバーコストが労務費・・・などと必死に置き換えていったのかと思うと大変だっただろうなぁと。
 
 本によれば、明治17年から大正10年までの各年度の貸借対照表と損益計算書の勘定科目の変遷を時系列的に追跡した結果、大正7年に原価計算が生成されたといえるという風に結論しているようです。40年近くかけながら原価計算をブラッシュアップしていったということなのですね。
 
 こうした苦労に比べれば、パソコンもあり、それがLANでつながり、エクセルやアクセスがある環境で原価計算を導入するなんて、対した苦労ではないかもしれません。昔の人は偉かったなぁと思うと同時に、やはり会社を大きくしようと思ったら、原価計算もやらないといけないのだと改めて思ったのでありました。

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2012年8月18日 (土)

消費税の原価計算その3(軽減税率を斬る。)

 消費税の「原価」として、もう1つ、軽減税率を導入するのか?という論点があります。各種論文(たとえば http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/46/takada/ronsou.pdf )によれば、消費税の税収のうち食料品のウェイトが2割強あるようで、税率を3ポイント引き上げて8%にした時に、食料品の税率を0%(いわゆるゼロ税率)にした場合、5000億円×8ポイント=4兆円の減収が生じます。

 消費税1ポイントの引き上げで2兆円の税収増と言われていますから、3ポイント引き上げて食料品をゼロ税率にしたら、6兆円の税収増と4兆円の税収減で、社会保障に行く部分はほとんどなくなってしまいます。

 なんでこうなるのか? それは、軽減税率制度は、バラマキ税制だからです。もっと言うならば、高所得者に手厚い逆進性バラマキ税制だからです。軽減税率は、エンゲル係数が高い低所得者にとってありがたい制度ですが、高所得者が食料品を購入する場合にも軽減税率が適用されるので高所得者にもありがたい制度になってしまいます。しかも、低所得者が自主流通米を2500円で買うところ、高所得者は魚沼産コシヒカリを5000円で買います。低所得者が100g300円の合挽き肉を買う横で、高所得者は、100g1200円のフィレ肉を買うわけです。つまり、消費税の減免額は、高所得者の方が大きいのです。だから、大きな税収減が生じてしまいます。

 民主党の子ども手当、農家の個別補償などは、バラマキだと批判されましたが、本当にそこに給付をすべきであるのならば、対象を絞り込んでの給付なので、バラマキとはいえません。このブログでも、散々書いてきたように子ども手当は、見返りに所得税の扶養控除を切られていますので、プラスマイナスゼロ。なので、バラマキではありません。こういうのと比較すると自民党が強く主張する軽減税率制度は、バラマキどころか、高所得者により厚くバラ撒く制度なのです。(と書くと私が民主党支持者のように見えますが、とんでもない。前回は投票したものの、本当にがっかりさせられました。)

 これを入れちゃったら、早期に12%、15%といった水準への再増税をしないとどうにもならなくなりそうに思います。軽減税率は、制度が複雑になるだけでなく、税収に対する大きな「原価」が伴います。消費税にこういう「原価」は願い下げです。

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2012年8月13日 (月)

消費税の原価計算その2

 8月11日の消費税の原価計算の続きです。
 
 消費税の増税収入に対応する「原価」として拾っておかねばならない項目に医療費の点数のアップというのがあったのを思い出しました。医療費は、非課税とされているのは皆様ご存知の通り。しかし、お医者さんが診療器具を購入したり、検査機器を購入するにあたっての消費税が増えてしまうと病院や医院の経営が苦しくなるので、医療報酬の点数がアップされることになります。

 医療費の支出が平成22年度予算ベースで32兆円。一般会計の中の社会保障関係費は医療も高齢者福祉も含めて28.7兆円ですが、これと社会保険料などと合わせて、別会計から医療費や年金は支出されるわけで、これでみると32兆円です。
 
 ただし、この32兆円の医療費が単純に108/105になるわけではありません。だって、お医者さんや看護婦さんの給与のように消費税のかからない支出もあるわけですから。それでも1%アップなら、3200億円の医療費のアップとなり、1%の税率アップで2兆円と言われる消費税増収に対する「原価」となります。

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2012年8月11日 (土)

消費税の原価計算

 変なタイトルですが、消費税を増税すると政府の税収が増えます。しかし、そのためには支出が増えたりするため、それを消費税増税のための「原価」と考え、その原価計算をしようという意味合いです。

 消費税は、大雑把には1ポイント2兆円の税収増になると言われています。5%から8%になれば、6兆円の税収が増えます。しかし、これを実施するためには、年金や生活保護手当の支給額のアップをしなければならず、また、政府の支出自体も消費税によって108/105だけ増えるので、従来通りの歳出をしようとすると、支出が膨らんでしまいます。

 消費税率の上昇により年金や生活保護費が増額されるはずで、また、簡易な給付というものも検討されています。大雑把に国民1人当たり、年間1万円の給付を行ったとすれば、どうなるでしょうか。1万円×1億人=1兆円。これでは、税収アップ額の1/6が吹き飛んでしまいます。これでは駄目です。年収300万円程度以下の家計(個人ではなく)にしか給付できないと考えるべきなのでしょうね。日本の世帯数は、約5000万世帯。このうち下位の2割くらいに1万円を給付するとなれば、1万円×1000万世帯=1000億円。これくらいなら許せる原価でしょうか。でも、現在の年金の支給額は、およそ34兆円のようで、これに3/105(本体価格に8%と5%の差の3%を掛ける)を乗じると、約1兆円となります。上記の試算よりはるかに多くの「原価」が発生しそうで、私は怖いなぁと思っています。サラリーマン家庭は、消費税が上がっても昇給するわけでもないのに、年金受給者の年金はどうして増えるのでしょうね?

 あと、国家予算の方も一般会計80兆円のうち国家公務員の給与など消費税の対象外の支出を50%と考えて、これに3/105を乗じると、1兆円を少し超えます。政府は、消費税の増税に応じて支出を削るのでしょうか。それとも、従来通りの支出をして、消費税のアップ分だけ歳出が増えるのでしょうか。歳出が増えるなら、それはここでの「原価」です。そのほか、自民党、公明党、民主党それぞれが消費税による経済への影響に対応して、土建国家的な予算対応をしろと言い出していますが、そうすると、これらはそのまま「原価」です。6兆円は、財政の改善にどれだけ生かされるのでしょうか。消費税が上がって、生活も国家予算も倹約を強いられるのであれば、6兆円が6兆円として生きてきますが、そうでないと、「原価」が高騰して、赤字になってしまうのではないかと心配です。

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2012年8月 9日 (木)

薬価の原価計算

 今週号の東洋経済誌の特集がクスリで、その中で高額ながん治療薬の薬価は、どう決まるのか?という話で、原価計算方式があるのだという紹介がありました。
 
 乳がんの治療薬ハーセプチン注射用150が56,110円、大腸がんの治療薬アバスチン点滴静注用400mgが173,511円、悪性リンパ腫の治療薬ゼヴァリンイットリウム(90Y)静注用セットに至っては、2,533,477円なのだそうですが、これらの値段はどう決まるのか?というお話です。
 
 この薬価は、基本的には「類似薬効比較方式」という仕組みで決められるのだそうです。適応症や含まれている成分のタイプが最も似ている医薬品の価格を参考にして決めるのですが、これに画期性、有用性、市場性、小児性の加算があって決めるのだそうです。そして、似たような作用や効果のない新薬には、「原価計算方式」というのがあるのだそうです。原価計算方式とは、製薬企業が製造経費や営業利益、流通経費などを積み上げて算出するのだとか。
 
 しかし、この製造経費というのは難しいですよね。巨額の研究開発費がかかっているはずで、この金額を特許が切れてジェネリック(後発薬)が出てくるまでの間に回収しなければならず、市場に出した最初は、売れ行きが悪く、懸命にマーケティングして大型新薬に育てて、ようやくそこまでの研究開発費とマーケティングコストを回収し、さらに製薬会社の正常利潤を上乗せできる薬価。この算出が高すぎるならば、健康保険を圧迫し、保険適用外なら患者の懐を直撃します。また、薬価が安くなってしまうなら、日本での発売は見合わせようという話になってしまって、日本の患者が新薬の恩恵を受けることができなくなります。
 
 具体的にはどうなっているのでしょうね。算出方法の作成や、製薬会社から提出される資料の信頼性の保証に公認会計士が関わったりしているのでしょうか?

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2012年8月 8日 (水)

原発の原価計算

 今朝のNHKラジオの中で、金子勝教授が「原発には減価償却不足がある。」という発言をしていました。どうも事故などで運転を停止している間は、原発の減価償却を止めているという趣旨のようです。だから、40年経っても減価償却が終わっていない、それゆえ古い原発でもなんでも運転再開を望んでいるというような趣旨に聞こえました。たとえば、東電の柏崎刈羽原発の名前なども上がっていました。

 この話の真偽は確かめていませんが、そうだとすると原発の減価償却は、一般企業の機械装置などの減価償却とは異なるルールで行われている可能性があり、その結果として電気料金算定の総括原価による原価計算、その結果の電気料金すべてが安めに算定されているということかなと思いました。

 原発は発電コストが安いというけれど、ルールが普通ではないならばその定義自体がおかしいし、原発のメンテナンスコストなども負担しながらの電気料金計算が正しいのか、思い切って原発のメンテナンスコストも廃炉のためのコストも全部特別損失として原価計算から外したうえでの火力・水力・その他の発電の総括原価の計算というものもしてみないと、原発6円、火力10円以上という発電コスト自体が信頼できないような気がしてきました。

 一般企業の会計基準などと違って、簡単に入手できるものではないため、簡単に検証できないのが困りものです。

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2012年8月 4日 (土)

学生向け協奏曲の作曲家たち

 フリードリヒ・ザイツ(1848年~1918年)、ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ(1755年~1824年)、シャルル=オーギュスト・ド・ベリオ(1802年~1870年)という作曲家をご存知でしょうか。おそらくヴァイオリンを学んだ人は100%知っていると思います。しかし、クラシック音楽鑑賞が趣味で、オタクの領域に達しているという人でも、聴くだけの人、ピアノは学んだがヴァイオリンは習ったことがないという人だとまったく知られていないと思います。

 この人たちは、すべて当時の有名なヴァイオリン奏者であり、ヴァイオリン教師。教師として指導する過程の中で、ベートーヴェンやメンデルスゾーンの協奏曲を弾く前段階での協奏曲の必要性を感じて自ら作曲したものではないかと思われます。ザイツのト長調や4番ニ長調の協奏曲は、ヴァイオリンの発表会では必ず誰かが弾く曲です。小学生中学年くらいの子供がやると非常にかわいらしいです。ヴィオッティの22番の協奏曲は、ザイツよりもう少し上の生徒が弾き、ベリオの「バレエの情景」や協奏曲も同じようなレベルの曲です。小学校高学年から中学生くらいでしょうか。

 続いて、次の作曲家はいかがでしょうか。ゲオルグ・ゴルターマン(1825年~1876年)、カール・ダヴィドフ(1838年~1889年)、ダヴィート・ポッパー (1843年~1913年)。彼らは、チェリストであり、チェロ協奏曲を作っています。また、ダヴィドフは、サポジニーコフというエチュードの中にも何曲か登場してきますので、エチュードも作っていたのかもしれません。
 ゴルターマンのチェロ協奏曲第4番ト長調は、中学生くらい?、ポッパーは高校生くらいが弾く感じでしょうか。また、小学生は、ザイツのニ長調の協奏曲を5度低くして、ト長調にした版を必ず弾きます。

 何で、こういう曲がそれぞれの楽器にあるのだろう?といったことを考えるとき、彼らの年代がそれを求めたのかな?と思います。6人のうちヴィオッティ以外が1800年代の中頃に活躍しています。パリ音楽院が1795年創立、ウィーン国立音楽大学の前身が1812年創立、上述のザイツは、ザクセン州のマクデブルク初の音楽学校の創立者と考えられているなど、まさにヨーロッパで音楽を学校で体系的に教えようという時期に活躍した人だったわけです。そして、創設された音楽学校の教授となったり、そういうところの教授から委嘱されたり、相談されて、作曲をしたのかな?などと思います。

 ピアノでいうとツェルニーとかクレマーとかシャルル=ルイ・アノン(1819年~1900年・・・日本では「ハノン」として有名)といったピアニストしか知らない作曲家がいますが、彼らが書いたのは練習曲集。ピアノの学生協奏曲というのはないですね。2台のピアノを並べて、協奏曲を弾くというのはまず見たことがない。このあたり、旋律から和声まですべて一人で出せるピアノと弦楽器の違いかもしれません。ということは、金管楽器や木管楽器にも私たち一般人が知らないその業界人だけに知られる作曲家がいるのかもしれませんね。たとえば、トランペット奏者にとってのフンメル、フルート奏者にとってのイベールが重要なレパートリーであるけれど、一般ファンには認知されていないように。

 私は、ザイツなどのヴァイオリンの作曲家は、自分の子供たちがヴァイオリンを習ったことで知ることができました。ほかにもヘンデルが素敵なヴァイオリンソナタを書いていることやバッハのヴァイオリン協奏曲が3曲(二重協奏曲を含む)あることや、ヴィヴァルディが「四季」以外にもヴァイオリン学習者にとって貴重なヴァイオリン協奏曲を書いていることも教えられました。じゃ、チェロの方は・・・? 実は、本日、上述のゴルターマンの4番の協奏曲第1楽章を発表会で弾いてきました。 四十の手習いですから、なんとかかんとか通ったというところですけど。でも、演奏技術はともかく、上述のような蘊蓄を知ることができただけでも音楽ファンとしては、本当に良い経験ができたと思っています。

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