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2012年7月26日 (木)

消費税の増税で得をする人、損する人

今週の東洋経済7/28号の90ページの「軽減税率導入は切り札か 乱発ぎみの低所得者対策」という記事は、大変興味深かったです。これを読むと消費税の増税で得する人がいることがわかります。当然、増税で可処分所得が減るなど損する人もいます。厳密には、年金等の引き上げ幅がどう決まるかで違ってくる話ではありますので、ご意見、情報等ありましたら、お寄せください。

1.前提情報
 8%への引き上げ時には、簡素な給付措置(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/5daijin/240417/siryou.pdf )があると言われています。これは低所得者に一定額、たとえば1万円とかを給付するというものです。そこでは、「生活保護や各種福祉
手当に係る物価スライド等の措置など、消費税率の引上げによる低所得者の負担の緩和に寄与すると考えられる諸施策との関係にも留意する。その際は、高齢者世帯、ひとり親世帯、若年非正規労働者世帯、子育て世帯など、低所得者世帯の属性に応じ、税制及び社会保障改革全体を通じた総合的な視点からの検討も併せて行い、重複の調整など必要な措置を講じて幅広い国民が負担を分かち合うという観点も踏まえて、全体として世代間・世代内の公平が図られるような制度設計を行う。」となっていますが、この辺りが今回のブログのネタです。
 もう1つ必需品に対する消費税増税の影響について、ブログ(http://hsakuma.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-f847.html )で書いてありますが、所得の階層の下位20%では、年間平均収入177万円、月間15万円ほどのうち、食料品に費やしているのは35,107円/月だけ。消費税が5ポイント上がっても1,755円しか支出は増えない。年間で21,060円です。逆に所得の階層の上位20%では、年間平均収入1,116万円、月間93万円ほどのうち、食料品に費やしているのは84,679円/月で下位層の2.4倍も消費しているわけです。

2.得する人1・・・年金受給者
 年金の制度は、物価スライド制を採っています。したがって、消費税の増税で年金生活者が消費する財貨の価格が108/105だけ値上がりしたら、その相当額だけ年金の給付額が引き上げられるようになっています。つまり、消費税が上がっても、収入が増えるのです。これで消費税の上昇の影響はなし。高級品や贅沢品を買うお金持ちの高齢者だけが消費税を負担することになります。
 これに加えて、上述の簡素な給付措置において「重複の調整など必要な措置」が十分に行われず、たとえば年間の所得が300万円以下の人に一律5千円なんていう給付の仕方をしたら、その分だけ年金生活者は得をしてしまいます。
 年金の1で述べた消費税の影響1,755円を考慮すると、消費税引き上げに伴う年金の月額アップが1,755円超であれば、そもそも年金受給者は得をするし、そのうえ簡素な給付措置ももらえたら完全に貰い得になります。

3.得する人2・・・生活保護受給者
 生活保護手当も、物価スライドの仕組みです。ですから、これも生活保護手当の月額が1,755円超で増えたら、貰い得になります。さらに、生活保護世帯にまで簡素な給付措置が行われたら貰い得になります。これに対して、次に述べるように給与所得者の収入は増えませんから、最低賃金の給与所得者と生活保護受給者の収入の差は、さらに拡大することになります。

4.損する人1・・・給与所得者(すなわち現役世代)
 給与をもらっている人たちは、消費税が上がっても給与が増えるわけではありません。だって、給与には消費税は乗せられていないですから。平成26年3月に20万円の給与の人は、4月に昇給がなければ同じ20万円。その昇給だって、本来、消費税が上がろうと上がるまいと年功その他で引き上げられるものであり、昇給があるから消費税の増税に対処してもらったわけではありません。また、時給1000円とかの人は、4月になっても時給が上がるわけではありません。したがって、消費税の値上がりで、月額1,755円,年額で21,060円以上の「簡素な給付措置」がもらえなければ、増税で損することになります。

5.損する人2・・・個人事業者や会社(これも現役世代)
 商売をしている人たちは、消費税を払います。たとえば、仕入700、給料280を払って1000の売り上げを上げている、つまり損益20の商店があれば、今は、50の消費税を預かり、35の消費税を仕入で払うので、差引15を納税しています。これが8%に増税になると、80の消費税を預かり、56の消費税を仕入で払い、差引24の消費税を納税することになります。したがって、もし、個人事業者や会社の社長が「消費税が上がって、従業員がかわいそうだ。少し昇給しよう。」と思って、給与が280が285になれば、損益は15に減ります。しかし、消費税の納税額は変わりませんから、単純に会社は損得ゼロか損です。ましてや、飲食店などで840円のランチの定食を864円に値上げすることができなければ、確実に損をするわけです。

 このように考えると、社会保障費を賄うために消費税を増税するのだというけれども、その負担を皆で分かち合うのではなく、社会保障費をもらっている人は得をして、社会保障費の負担をしている納税者が損をするという仕組みになっていることがわかります。消費税が上がるのだから、生活を切り詰めなければ・・・と考えるのは現役世代。高齢者や生活保護受給者は、今までと同じ生活の規模を維持できるし、簡素な給付措置の出来次第では、儲かるわけです。これっておかしなことだと思いませんか?

6.では、政府は得をするのか、損するのか
 消費税が増税されると、政府の歳入が増えます。しかし、年々高齢者の数は増え、不景気が続いて仕事に就けない人が生活保護を受けている現状では、政府の歳出も増えています。この増加を国債の発行で賄うのは良くないから、増税に踏み切るわけですが、上記のように年金も増え、生活保護手当も増え、医療費も点数をアップしていたら、歳出自体が自動的に増えます。さらには、国道を整備するコスト、防衛費その他も消費税アップで歳出が108/105だけ増えるはずです。そうなると、歳出自体の規模を105/108倍で切り下げない限り、得をする(財政が改善する)ことがないのではないか?などと思ってしまいます。

 自民党が主張する軽減税率は、食料品に導入すると消費税1%当たり、2.5兆円の歳入ロスになると言われています。ちなみに消費税を1%アップすると税収は2兆円アップ。じゃあ、せっかく5%を8%に引き上げても軽減税率を導入したら税収は3.5兆円しか増えないわけです。これじゃ、増大する社会保障費を賄えるわけ訳はありません。このままでは、現役世代も日本国政府もやせ細りながら、弱者が肥えていくというおかしな結果が待っているような気がしてなりません。

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2012年7月19日 (木)

長距離バスの原価計算(2)

 長距離バス大手のウィラーエクスプレスが平均200円の値上げをしたという発表がありました。また、国交省が行った高速ツアーバス会社の緊急監査で重大な違反を指摘された会社が48社とか、事業から撤退するバス所有者が××社といったニュースも出ています。
 
 でも、なんで200円?という気がしましたので、また、少し原価計算です。なお、前回、長距離バスの原価計算について書いたページは、http://hsakuma.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-5079.html ですので、一緒にご参照ください。
 
 今回の200円の値上げ、バスの平均乗車率が8割として30人くらいだとどうなるか。通常の観光バスだと50人くらい乗れそうですが、最近の高速バスは、1列3人とか余裕のある乗車ができるのが魅力だったりするようなので、40人×80%かな?と。そうすると、200円×30人で6千円。前回書いた時には運転手の日当が15,000円かな?みたいな想定で書いていますが、これだと運転手の日当の4割にしかなりません。ただ、2名体制にしても交代で運転するので、片方は仮眠できます。なので、手当がそのまま増えるわけではないと考えてもかなり足りない。
 
 この値上げは、とりあえず、平均200円で競合他社の値付けが変わったり、値上げの影響を見ながら、次の段階の料金体系を考えるという暫定値上げなのかな?と思ったりします。あるいは、ウィラーエクスプレスのホームページによれば夜間は450kmを超える場合2名体制なので(http://travel.willer.co.jp/quality/safety.html)、これが事故以前からの対応であれば、事故により原価の上昇はないということになります。それであれば、原価の影響ではなく、200円引き上げても集客できるという利益の確保に動いたということかもしれません。前回の分析では、ぎりぎりの価格設定のように見えるというのが結論でしたので。むしろあまり安すぎると客が集まらなかったりするのでしょうか?

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2012年7月18日 (水)

勝訴判決その後

 事務所のホームページの方には下記の通りご案内を出していたのですが、お客様の相続税申告に係る税務訴訟を補佐人として支援してきたところ、無事、東京地裁で勝訴判決を得ることができ、国からの控訴もなく、判決が確定いたしました。

http://www.sakumakaikei.com/info201207.html

 その後、今週になって、国税庁のホームページに下記のような案内が登場し、今回の訴訟と同様の納税者については、遡って還付の取り扱いがされることになりました。

http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/teinai/01.htm

 地裁での判決にすぎないので、ここまで来るとは思っていなかったのですが、よりよい納税環境の整備へのお手伝いができたのかな?とうれしく思っております。

 以上、ご報告です。

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