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2012年6月25日 (月)

輸出免税は益税か?

 消費税談義が賑やかになってくると、「輸出企業が発言力がある経団連は、消費税率が上がった方が税金が還付されて得だから、消費税率の引き上げを主張するんだ」という説が出てきます。いや、実は、先ほど、顧問先からそういう電話があったもので。
 
 いかにも陰謀めいていて魅力があるんですが、消費税の理論からはぜんぜん益税ではないのです。消費税は、国内の取引に課税する税金であり、国内で生じて国内の人が享受する付加価値に課税します。という原理を前提に国内で100仕入れて、それを140で海外に輸出する企業を考えてみます。
 
 140-100=40の付加価値があり、これを国内に売れば、5%の2の納税をします。これは140×5%-100×5%=7-5=2と計算していますが、要するに付加価値額×消費税率です。輸出の場合には、40の付加価値に課税しないわけで、140の輸出に消費税は乗せない、そして、仕入れるときに105払ったから、5は還付してもらう。それだけのこと。消費税が8%になったら、仕入れるときに108を払ったから8を還付してもらうだけのこと。どこにも利益は出ていません。

 外国への輸出にも消費税をかければ、税収が増えるじゃないかという意見もありそうですが、付加価値税・消費税のない国が140で輸出して、我が国からは147で輸出させたら、当然、価格競争で負けます。なので、海外の人に我が国の付加価値にかかる税金を負担させることはできないのです。外国の人に課税することはできないという単純な話とも言えます。
 
 変だと思う人は、今度は、100輸入してきて、140で国内に売る会社を考えてみましょう。100輸入をしてくる際に税関で5%の5だけ輸入消費税を払います。そして、消費税込みで147で売るわけですから、7-5=2だけの消費税を払ったことになります。税関という税務組織に5の消費税を払っておいて、消費税の還付でその5はマイナスとして扱うのが不思議ですが、そういうことです。100の輸入代金には海外の付加価値税は乗っていないはずなので、これで輸出と輸入はきれいに辻褄が合っているわけです。でも、輸入時に5払って、消費税申告で2を払うから損税だとはだれも言いません。石油会社とかガス会社が損税は困るという話を聞いたことがありますか?
 
 と、説明しても、「いや、大企業は、105で仕入れていたものが消費税が8%になった時には、107くらいにしか値上げをさせず(価格転嫁をさせず)、消費税を得するんじゃないか?」という人がいたりします。しかし、それも違います。107しか払わないぞ、と納品業者に値引きをさせたなら、107÷1.08=99.074で仕入れて、7.926の消費税が乗って、107という計算になります。そして、全部輸出ならば、7.926が還付されるだけです。8が還付されるわけではありません。なので、払った消費税がそのまま還付されるだけなので、益税は出ない。
 
 国内に売ろうが輸出しようが、100で仕入れて140で売れば、付加価値は40。そのうち国内に売った部分だけ消費税がかかるというだけの話なんです。ご理解いただけますでしょうか?

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2012年6月22日 (金)

こんなことも知らない人が政策を語っている

(名誉?なことにネットの中でこの文章が引用されて議論の対象になっているようなので、少し、補足、補筆を<>に入れてみました。 )

 「増税は誰のためか」という対談集(扶桑社)を読んでいるのですが、その中で、元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏が次のようなことを語っています。

 国税庁が把握している法人が280万社、年金機構が200万社でズレがあることを指摘したところで「80万件も少ないのはなぜかというと、社会保険料を企業から徴収していないんです。(略)でも、従業員5人以上の会社は、全部、給料から保険料を天引き=源泉徴収しているわけですよ。つまり従業員から保険料を取っておきながら、年金機構には払っていない法人が何十万社もありそうなんです。」という。

 これに対して神保哲生氏が「支払ったと思っていたはずの保険料が、会社のフトコロに入っちゃっている。そんな会社が80万社もあるわけですね。」と相槌を。

 この人たちは、あまりにも中小企業の実態を知りません。中小企業の社長ならおそらくみんな答えを知っています。社会保険に加入したくないから加入していないだけなんです。当然、従業員の給与から健康保険料も厚生年金も天引きなどしません。「国民健康保険や国民年金に加入して、自分で払ってね」と告げ、従業員も社会保険に加入したら手取りの給与が減ってしまうから、入ってほしくなかったり、パートの主婦は、ご主人の扶養家族から外れちゃうので入ったら損をすると思っているだけのこと。納めもしない社会保険料を給与から天引きするような出来損ないの詐欺師みたいな会社は、少なくとも私は見たことがありません。
<年金記録の間違い問題がありましたが、その中には、従業員からの社会保険料を徴収していながら、会社の資金繰りが悪くて払わない、少ない給与額で届けを出して・・・というのがありましたが、これは、年金機構加入済みの200万社の問題です。80万社は加入していないのだから、給与から天引きしようがないです。従業員に健康保険証を渡さすことなく天引きしていたら会社も悪いが、給与明細を見ない従業員にも多少の過失があります。なお、念のために書きますが、健康保険と厚生年金の支払いは旧社会保険事務所にセットで行うのが原則です。なので、健康保険にだけ加入して厚生年金には加入しないというテクニックはないはずです。
 また、主婦のパート問題は、スーパーマーケット業界などが厚生年金の加入幅拡大に反対する背景そのものであり、違法行為とわかっていても(わかっていない?)何十万人というパート主婦等が「あえて社会保険など入りたくない」と思っているし、社会保険事務所の調査の結果、社会保険に加入させた途端にパートの主婦等に退職されてしまったという話も耳にするところです。ほとんど問題ない80万社に濡れ衣を着せるなら、こっちの数十万人への対応が先ですよね。数十万人と書きましたが、ここは統計的には押さえていません。10数万人かもしれないし、100数十万人かもしれません。>

 中小企業のこうした実態を知らずに元財務官僚が政権政党に助言したりしているというのは恐ろしいことだと思いました。彼は、「これは新たに『歳入庁』を作って、税金と保険料の徴収を一緒にすれば解決する問題なんです。」と語ります。しかし、そうなると、毎月の給与から社会保険料が源泉徴収されて手取りが減る人、それとほぼ同額を会社負担分として法定福利費を払わされることで利益を失う中小企業、社会保険に入りたくないと主張すること自体は脱法行為的とはいえ今まで払わないでいた保険料を払わなければいけなくなるパートの主婦など、消費税の増税どころではない国民負担が生じます。大企業は中小企業に十分な利益を取らせてくれません。だから、少しでも安く従業員を雇わなければならない。そこで、「雇ってあげるけど、社会保険料は入らないから、国保に入ってね」となる。
<昔はともかく、今は、会社を作って社長なり従業員なり1人でも常勤状態の人に給与を払ったら社会保険に加入するのがルールです。5人以上になったら入るというのは個人事業の話ではないかな。このあたりの記述でも、高橋さんの発言に疑問があります。でも、それはさておき、「社保完備」と銘打って求人でもするようになるまでは、社会保険への加入はしないというのは、トイレのある公園脇に車を止めてトイレに駆け込む違法駐車や60キロ制限の首都高速を75キロで走っちゃう程度の違法行為と同じような社会に定着した違法だと思っています。ここを厳罰化するならば、たとえばトイレのある公園には必ず駐車場を用意したり、首都高速の渋滞の増加を我慢したり、社会的な準備が必要だと思う、そういう部類の違法行為だと思っているということです。>

 この構造に踏み込まない限り、歳入庁を作って、社会保険への加入を強制したら、まさに80万社に雇用されている従業員給与×社会保険料会社負担分の料率だけ中小企業の利益が失われるわけです。社長と従業員の2人が対象だとしても、80万社×2人×300万円?×10%=4800億円?という金額の納付を社長と従業員の合計2人しかいないような会社群がしなければいけないわけです。社会保険料倒産で死屍累々となりそうな気がするのです。しかし、高橋洋一氏は、徴収されて納付されていない「財源」が中小企業にあると思っているわけで、この誤解は恐ろしいことだと思います。
<10%は、社会保険料の会社負担分を概数として使ったものです。厳罰化には、上記のような副作用があるよ、だから、社会的な準備をなしにやっちゃ駄目ですよと言いたいわけです。少なくとも従業員から天引きしていても社会保険料の納付をしていないというのであれば問題ですが、給与明細も見ないような従業員だけで構成されている一部の企業だけの問題で、少なくとも私は顧問先等でそういう会社は見ていないということを言いたいわけです。>

 税制とか中小企業の実態というものをこれくらい有名な人でも知らないのだということを思い知らされて、愕然としたもので、ブログにまとめてみました。

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2012年6月 6日 (水)

議員は、なぜ社会保険料の連年引き上げに文句を言わないか

 今週のダイヤモンド誌で野口悠紀雄氏が消費税の引き上げに関して、社会保険料は、2017年までずっと引き上げられるということを取り出して、社会保険料の引き上げに文句を言わずに消費税の引き上げだけ反対するのは「政局に絡んだ反対のための反対としか考えられない」と結論しています。
 
 しかし、読んでいて本当にそうなのだろうか?と思いました。もちろん、社会保険料の引き上げはずっと以前の社会保険改革の法律で決まってしまっていることで、これから決まる消費税なら政局にできます。が、もっと重要なことは、社会保険料は、サラリーマンの場合給与天引きで、その痛みが分かりにくい。それに比べて、消費税は、1050円の支出が1080円になり1100円になるということで、目に見える支出だからではないかと思います。
 
 しかし、本当に国のことを考え、国のための政治をしようとするならば、国会議員は国民に見える部分だけで議論をしていいわけはありません。マスコミもそうですが、テレビなどは映像という説得力の高い手段を持っているのだから、きちんと伝えればよいのです。しかし、それをしない。なぜしないのでしょう。
 1.簡単には伝わらないから伝わりやすいもので投票、視聴率・購読者を稼げば良いから?
 2.国の将来のことなど考えていないから?
 3.どんなに噛み砕いて伝えても、国民は馬鹿で伝わらないと判断しているから?
 
 議員は、目先の票を、テレビは視聴率を追いかけているだけだと切り捨てるのは簡単です。しかし、実のところは、3なのではないでしょうか。きちんとしたことを伝えても理解できず、目に見えるわかりやすいことだけ訴えた議員が当選し、そういうメディアが売上を伸ばす。だから、議員も「国のことを考える俺が議員になって、国を変えてやろう」という大志を持っているけれども、まずは議員にならなければタダの人。だから、票の取れるような行動をせざるを得ない。マスコミに入社する人も「社会に役立つ報道をしよう」といった高邁な志をもって入社する人も多いのでしょうけれど、自分たちの作った記事や番組を見てもらえなければそれまで。だから、まずは顧客を獲得しなければならない。で、国民が馬鹿だから馬鹿向けの報道になってしまっているに過ぎないのではないでしょうか。
 
 ギリシャで財政健全化のための緊縮財政に国民が反対して、ストをしたり、選挙の結果で連立が成立しなかったりというのを見て、「ギリシャ人って、自分の国のことをきちんと考えているのか?」と思ったりするわけですが、実は、我々もあまり変わらないことをしているのではないでしょうか。私もバカ。あなたもバカ。み~んなバカ。だから、議員もマスコミもバカ。なんか、悲しくなってきますね。みんなで「学問のすすめ」でも読みましょうか(笑)。

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2012年6月 3日 (日)

固定資産税・都市計画税課税明細書の見方が難しい件

 本日、都税事務所から固定資産税の課税明細書が到着しました。6月は、お金が無くなる月です。固定資産税、住民税、そして7月に従業員賞与、1~6月に源泉徴収した従業員の所得税を納付しなければいけません。

 いや、愚痴はおいておいて、この固定資産税の課税明細書の見方が難しい。3月にある不動産関連の雑誌に「ということで、固定資産税の納付の通知が来たら、課税明細書を見てみましょう」などと書いてしまったけれど、執筆者が読んでも難しいのだから、読者にはわからないかもなぁ・・・と。

 第1のネックが「負担水準」なるもの。住宅地の場合ですが、①前年度の課税標準額よりも平成24年の価格(または課税標準の特例額)が低ければ、そのままの今年の本則課税標準額を課税標準にしていく、②今年の方が高くて前年/今年がの90%以上100%未満であれば前年度の課税標準額に据え置いてくれる、③前年/今年が90%未満であれば前年度の課税標準額に今年の課税標準額の5%を加えた額にしていく(ただし、その加えた額が90%を超える場合90%)、という感じ。

 そして、上記①のカッコの中の「課税標準の特例額」が200㎡までの小規模住宅用地は、価格×1/6とし、200㎡超の一般住宅用地は価格×1/3となっており、実際の地価との感覚が狂ってきます。もちろん、課税標準が安くなるのだから、土地を持っている人にとってはありがたいのですが。

 さらに税額が出た後で、小規模軽減額など3種類の税額の軽減があります。

 結果として、なんだか、計算がわからないまま毎年上がっているみたいで嫌だなぁという感触だけ残っているわけですが、今年は、多くの人は、下がっているのではないか?と思います。公示地価が下がっている今年が3年に1度の評価替えの年に当たり、この数年間の地価の下落が課税標準に反映しているはずですので。

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