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2012年3月11日 (日)

寄附金控除について考える

 先日、税理士仲間で雑談をしている中で、「今年の申告では東日本大震災があったから軒並み寄附金控除があるんじゃないかと思っていたけど、案外少なくない?」という話が出ました。実は、その通りで、毎年ユニセフや赤十字、あるいは公益法人やNPO法人に寄附している人は例年通り寄附をしていますが、これまでしていない人で震災の寄附金をしている人はあまりいません。みずほ銀行の昨年3月のシステムダウンは、寄附金の口座への振込みが殺到して起きたと言われているのですが、システムダウンするほどの殺到と税理士仲間の印象とがまったく一致しないのです。

 念のため、寄附金控除概論を。公益増進のため、寄附金をした人は、その金額のうち一定額を所得から控除したり(所得控除)、一定額を税額から控除する(税額控除)ことが認められています。これらを寄附金控除と総称しています。ふるさと納税などもこの控除の一環の制度ととらえることができます。いろいろ制度がややこしいものの、国等が認める公益的な事業者への寄附は、所得税と住民税で50%の税額控除ができ、震災の被害を受けた自治体に寄付をしようという場合、ふるさと納税が適用されると寄附金のほとんど全額が税額控除できるようになっています。

 こうした有利な仕組みなのに実際の確定申告で登場しないのはなぜか。1つには寄附の領収書って残っていないのではないか?ということ。イベント会場などで義捐金を集めるといったことが頻繁に行われていたようですが、この場合、領収書の発行って、行われません。なので、「ずいぶん募金箱には寄附したけど寄附金控除できるような領収書ってないよなぁ」という人がけっこういらっしゃるのではないか?ということです。逆に言えば、あの募金箱方式って、手っ取り早く募金を集めることができますが、税制的には正しい方法ではないことになります。募金箱に1万円入れるなら、被災した自治体に10万円募金して申告で9万円を取り戻せば、実質1万円の寄附で被災自治体に10万円のお金を届けることができます。あるいは、ユニセフや日本赤十字に2万円寄付して、1万円の寄附金の税額控除で取り戻してもよいわけです。

 2つめの理由が寄附金控除って面倒だからなのではないでしょうか。多くの国民は、給与所得者であり、年末調整で1年間の所得税が決まり、住民税も決まってしまいます。医療費控除と同様に寄附金控除もわざわざ申告書を書かなければいけないので、そもそも煩わしく感じて、領収書も保存されないのではないかというもの。しかし、税理士の顧客は、事業所得や不動産所得があって、税理士に申告書の作成を毎年依頼している人たちです。その人たちに寄附金控除を説明しても「ありません」の一言。意外と寄附はされていない、あるいは申告書で還付を受けようとするほどの寄附はしていないということなのかもしれません。

 という話をしたら、税法を知らない家内が「寄附をして税金が取り戻せるって矛盾しない?」という知らないからこそ言える根本的な疑問を呈してくれました。「多くの国民は被災地の状況を知り、応援したくて寄附をしたわけで、国が我々に還付するお金があったら、そのお金も被災地の復興に使うべきだ。半分は税金で返ってくるから寄附しようと思った人がどれだけいるのか?」というのです。それもそうです。震災の復興は、国や地方自治体がするべきなのだから、寄附できるゆとりのある国民、区市町村民に還付している場合じゃないだろう!ということですね。

 そこで、あらためて寄附金控除の意義とは何か?と考えさせられました。本来は、公益的な活動をしている法人や団体への寄附を促進するための施策が寄附金控除でした。たとえば、財政難だから文化的な活動をしている団体(オーケストラとか美術館とか)への補助金が減らされたりすると、国の文化活動の水準が下がってしまいます。そこで、寄附金に優遇措置をすることで、そうした公益的活動への寄附が集まりやすくする仕組みが寄附金控除です。寄附金控除をするくらいなら、補助金を減らさなければいいのに・・・という疑問が当然出てきます。この疑問は、国や地方自治体が補助金を交付すべき団体と減らしてもよい団体をきちんと判断できると思っているから出てくるのだと思います。国や地方自治体(の役人)には、文化を解する能力がないとしたなら、補助金が交付されるべき団体に交付されずに、どうでもよい団体に交付されてしまう恐れがあります。

 そこで、寄附金控除という制度があれば、多くの市民が応援したいと思う団体に寄附が集まり、多くの市民が応援する気にならない団体には寄附が集まらないという結果が期待できます。つまり国の補助金交付先の選別を市民が自由に、勝手に、それぞれの視点で行ってくれるのです。この仕組みを通すことで、役人の形式的判断での補助金の交付先決定を回避することができ、納税者が税の行先を決めることができるという効能が出てくるわけです。これこそが寄附金控除の大事な機能なのではないでしょうか。

 とすれば、国や地方自治体への寄附というのはあまり意味がない。国や地方自治体への寄附金控除より民間団体への寄附金控除を優遇していくような方策こそが大事なのかな?と思ったのでありました。

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