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2011年5月22日 (日)

消費税は逆進的か?

 小飼弾さんという有名なブロガーの方がいらっしゃいます。その方の主張に消費税は四重に逆進的だというものがありました。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51573824.html

 これは、その前に「消費税は三重に逆心的である」というブログがあり、それを受けて、消費税の引き上げ時には年金も引き上げられているという事実を指摘して、だから四重だという論旨のようです。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51468149.html
 その要点は、ご本人が下記のようにまとめられています。
 「消費税は単に高所得なほど低実効税率という意味で逆進的であるにとどまらず、高資産者ほど低実効税率という意味でも逆進的であり、その上福祉の財源にあてることによって、高齢者ほど低実効税率--どころか負の消費税!--という逆進性が加わり、逆進性は三重になるのだ。」

 これの最初の逆進性は一般に言われる逆進性です。低所得者は、所得のほとんどを消費性ざるを得ないが、高所得者は、貯蓄に回したりする。だから、支出消費税額/所得 で計算すると、高所得者ほど実効税率が下がるというものです。が、低所得者がサイゼリアで300円のパスタを食べるが、高所得者は帝国ホテルで3000円のパスタを食べるわけで、消費に対して同じ税率で税をかけるという意味では極めて公平ともいえます。よく「消費税には逆進性があるから、複数税率制にして食品には安い課税を」なんていう主張もあるのですが、低所得者が100g300円のオージービーフを買う隣で、高所得者は100g1300円の和牛ヒレステーキ肉を買うわけで、複数税率にしても高所得者に与えられる恩典は相対的に大きくなります。これに対する対策を消費税でウンヌンするより、所得税もあるからいいじゃない!というのが合理的な解決策。足りなければ所得税を増税すればよい。

 2番目の高資産者ほど低実効税率だという主張は、一種のごまかしの議論であり、消費税は消費に課税する税です。なので、支出消費税/所有資産で計算したら、当然に「高資産者ほど低実効税率」となります。でも、同じ事を所得税でやっても同じ。もちろん、高資産者が高所得者であり、高額納税者である可能性もあるので、消費税ほどの差は出ないでしょうけれど、田園調布の100坪の土地に住んでいる年金暮らしの元社長がいてもおかしくないわけですから、所得税といえどもそれなりに「高資産者ほど低実効税率」となると思います。つまり、これはこじつけです。消費税だけでは、高資産者への課税が足りないということなら、相続税や固定資産税や譲渡所得税を増やせば良いのでしょう。

 3番目の「福祉の財源にあてることによって、高齢者ほど低実効税率」も私には理解できません。消費税は、一般税であり福祉目的税ではありません。福祉財源はどんどん増えていく傾向にあるので、財源不足に応じて増税したら、福祉財源のために増税したように見えるだけのことです。お金に色はありませんが、税にも色がないと思います。税収とその使途をセットで考えられても困ると思いました。

 そして、4番目の主張は、消費税が引き上げられたときには、年金もスライドして引き上げられている。つまり、消費税の増税で庶民が困っているときに、年金生活者は増税分だけ収入が増えているというものです。でも、これは、年金が生活費に充てることを想定していて、物価スライドを導入しているから必然なんだと思います。この年金の引き上げ時には、医療費の点数も引き上げられているし、生活保護手当も引き上げられていると思います。年金生活者を富裕層と見るか、貧しい人から富裕層までいると見るかの見方の問題なのでしょう。ちなみに年金取得者や医療費点数が上がった医者には所得税がかけられており、基礎控除などが消費税スライドで動かないならば、彼らは所得税が増えるはずであり、100%もらい得にはなっていないと思います。

 以上のように考えると、完全な税なんてないわけで、必ず複数の種類の税を組み合わせる必要があり、だから、所得税、法人税、相続税、固定資産税などいろいろな税目があるのだと思います。つまり、増税や減税を考えるときには、特定の税目の税収が変わることで、国民全体の納税のポートフォリオがどう変わるかを考えるのであり、「消費税は逆進的だから引き上げるべきではない」といった単体での議論は意味がないと思うのです。

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2011年5月14日 (土)

枝野さんの発言を好意的に解釈するとすれば

 昨日の枝野さんの発言、すなわち「銀行に任意で債権放棄を求める」という発言ですが、世間全般、なに言ってんだ?状態だったと思います。弁護士なのに、なんでああいう発言ができるのか?という意見も。

 私もそれが謎だったんですが、Twitterでやり取りしている中で、思ったことをメモしてみます。一般的な議論としては、会社がおかしくなったら、株主が有限責任で出資額を限度に負担して、それでも債務超過なら債権者が損失を被る。こういう順番です。しかし、東電の場合はどうか? ボーナスごとに東電株を買うのが健全な蓄財方法だといった社会の常識があり、東電の有価証券報告書には、「原発にもしものことがあったら債務超過に陥って、非常に厳しいことになる」みたいなまでのリスク情報は書かれていません。しかも東電株は100株単位、20万円程度で買えた。

 それに対して、金融機関は、貸し出しのプロ、リスク管理のプロであり、そのプロが数百億円、数千億円という単位でお金を貸し出す際に原発のリスクから何から検討しているだろう。それであれば、プロとしての責任、貸し出す金額の大きさに応じた慎重さというものがあっても当然だろう・・・と枝野氏が考えたとすれば、それもそうだろうなぁと。

 このブログで前から書いているように上場株式というのは、会社の継続性について証券取引所が審査をした上で上場させていますから、粉飾などは監査法人が発見できないほど巧妙にやられれば仕方ないとして、天災その他の事故1発で会社が消えちゃうようなことがあっては投資家保護が図れません。であれば、金融商品取引法の精神から言えば、原発事故1発で東電が上場廃止ではよろしくない。

 こんな対比で言えば、東電の株式は、有価証券報告書すら読まずに買われるのが社会常識であり、20万円を支出する際の慎重さと数千億円を貸し出す際の慎重さでは、たとえそれが株式と融資で制度が違っていても、比較均衡としては銀行の責任のほうが重いといえばそうかもしれません。枝野さんは、あるいは、政府は、東電に会社更生法を出させたらどうなる、政府が連帯債務を負うみたいな宣言をしたらどうなる?などといろいろなシミュレーションを重ねた中で、損失負担責任の重いところに負担させながら、庶民(一般国民だけでなく、それと重なる東電株主)の負担をできるだけ軽くしようと思ったのではないか。そのように考えると、枝野発言は、極めて私の意見に近いものだったのであり、私は彼の意見に納得するべきところだったのかもしれません。

 物事、いろいろな視野から考えると、いろいろな結論が導き出しうるものだという事例の1つなのでしょうね。

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2011年5月 2日 (月)

事業計画と物語

 先月、某所で「事業計画の作り方」というセミナー講師をやりました。その中での肝は、「数字を並べる結論部分は、経理マンでも税理士でもできる。しかし、なぜその数字が並ぶのか、現在と違ってどういう戦略を取るから、どういう戦術を取るから、その結果としてコストや設備投資が発生し、売上も変わるといった前提部分が弱くなる。その前提が弱いと、計画と実績の対比ができないから、経営管理のプロセスで使えない。また、戦略や戦術は、企業の理念、歴史、現状の資源、ライバルの状況などによっても異なってくるので、経営理念や経営目標から作っていくわけだが、そこは経理マンや税理士にはできない。」という部分です。数字を並べる部分は、このホームページにも載せてあるエクセルのシートで鉛筆舐め舐め、いやキーボード舐め舐め?入力すれば、できあがるわけです。
 
 なので、専務をしている二代目などに数字の前までをやってもらって、数字は一緒に作れば後継者育成にもなると思います・・・みたいな余談をはさみながら話を進めました。が、本日、経理理念から事業計画の手前の部分を「物語」で補う(ないしは代替する)という話を聞いて、これは二代目がいなくてもアウトソーシングでできる!と思いました。
 
 クロスロードの「物語」作成サービス。http://www.cross-r.jp/service/index.html
 ヒヤリングが重要なこのプロセスをヒヤリングのプロが行うというものです。そして、事業計画にするのではなく、「物語」として、それ単体で従業員や得意先や投資家に読ませる作品になっています。事業計画の作成とは別に、作成段階でもう1つアウトプットができるというのが面白いところ。会社のファンができるのが物語です。もちろん、これを読みながら、戦略立案をして、数字に落とし込めば、事業計画書になっていきますが、一緒にこの「物語」を銀行マンやベンチャーキャピタルに読んでもらえば、会社への理解が深まります。
 
 社長からお話を聞きながら、「そうだ、これだよ!」と思って冒頭の話をしたら、出てきたのが、上記のURLの頁の4つのマトリックスの中央に「物語」が置かれたページ。ちょっとびっくりしてしまいました。

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