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2011年4月11日 (月)

原発のコスト

 原子力、火力、水力の発電では、原発が一番コストが安く、水力が一番高いと言われています。でも、水力なんて、ダム造った後は、水をタービンに落として、回すだけで安そうに思えるわけです。ただ、水力は、数十万キロワット、原発は百数十万キロワット、規模が1ケタ違うのです。なので、規模の経済性が働く余地はあります。でも、今回のような事故や耐用年数経過後の廃棄コストが折り込まれていないのではないか?という疑問もあるようです。

 そこで、原子力発電のコストって、本当に安いのか?という疑問から、再処理工場などを営む日本原燃や核燃料サイクル機構の決算を見ないとダメなのではないか?ということで、EDINETで日本原燃株式会社の2010年有価証券報告書を見てみました。そう、原発問題についても、決算書からアプローチするのが公認会計士、税理士のサガですね。

 さて、ざっと眺めると、東電への役務売上が1106億円とかあり、再処理料金前受金3376億円も。来年以降の処理代金も払っているんですね、3376億円も。当然、関西電力他もこの下に並ぶはずですが、関連当事者との取引ではこの2社だけが開示。東電が20.56%を持ち、関電が13.49%なので。関電は、主要な株主として、サービスで開示されている模様。

 先日Twitterで呟いたのですが、この会社には、1.47兆円の建設仮勘定があります。内容が気になりますね。今期は再処理工場に213億円、MOX燃料加工施設に193億円投入し・・・というのを過去から続けた結果のようです。再処理工場やMOX燃料加工施設は完成するのでしょうか? 完成しないとお金の無駄遣いですが、完成したらしたで、結構な減価償却費が発生するので、この会社は、赤字転落かな?と思います。もちろん、これらの施設が稼働すれば売上高が増えるのでしょうけれど、原発は増やせない方向の世論ですよね。

 そして、疑問なのが引当金。加工施設等廃止措置引当金が48億円計上されているのですが、注記によるとウラン濃縮事業の廃止措置に備えるため、計上されているそうです。しかし、「この廃止措置費用等は、今後のウラン廃棄物に係る処分制度や廃棄措置実施内容の不確実性から事業総額は大きく変動する可能性が高く(現有設備に係る廃止措置費用等は概算10百億円から17百億円の範囲と想定)、また、当社における将来の費用負担額についても不明確であることから、合理的な見積もりができない額については、引当額に含まれていません。」とのこと。1千億円から1700億円が、この会社の負担になるか、電力会社なのか、国なのかわからないけど、これだけの簿外債務的なものがあるということですね。これが簿外なので、そして、ボロ儲けしているわけではないことから(というより、繰越損失419億円)、この簿外債務的な部分は、発電コストに折り込まれていないことが判明しました。

 簿外債務「的」と書いたのは、会計的には問題がないからです。合理的に見積もりできない将来費用の負担額は引当金の計上要件を満たしませんので。が、結果として、これが原発コストを安く見せかけていることは事実だと思います。

 原発のコストを論じる時には、この引当金の注記も参考にしながら、話をしないといけないです。

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コメント

加工施設等廃止措置引当金の廃止措置費用等の概算を1ケタ間違って書いていたので、訂正です。

投稿: 佐久間裕幸 | 2011年4月13日 (水) 09時40分

ご無沙汰です。廃棄物のコストは誰も全貌が分かっていません。処分場も決まっていないのですから、立地や建設のコストがはじける訳がありませんね。高レベル廃棄物は処分場の建設開始から閉じるまで80年くらいかかります。そういう超長期の事業は割引率をどう設定するかで積み立てる金額はまったく変わってしまいます。それに、広告費、帳簿には載らない立地自治体への協力、寄付、加えて、国が原子力のために手当てしている予算、関係団体の活動にかかる経費まで本当はカウントしなければならないのです。そういったことすべて考え合わせて、プロに考えていただかないといけないのでしょうね。

投稿: maeda | 2011年4月22日 (金) 20時33分

maedaさん、コメントありがとうございます。
 そうですね、引当金が計上できないということは、廃棄物のコストは誰も全貌がわかっていないということ。それなのに原子力発電は、安価でCO2を出さない環境にやさしい発電方法ですと宣伝されてきたのは、なんだったんだろうと思います。また、事実を確認していませんが、揚水発電は原発が発電出力をコントロールできないことからセットで必要であるにも関わらず、水力発電のコストに入れてあるという話も聞いたりしました。東電がそういう宣伝をしていたら、それが正しくないよと学者が指摘したり、行政指導しなければいけないのに、されないまま今日に至ったというのがなんとも理解できません。
 こうなってみると反原発の人たちが全面的に正しかったことになり、戦後、教科書に墨塗りしたような(した年代ではないですが)価値観がひっくり返るようなショックがあります。

投稿: 佐久間裕幸 | 2011年4月22日 (金) 22時08分

行政指導できるような会社ではないですよ。あまりに力が大きすぎることが問題ですね。正論が生きていけない辻褄合わせの世界です。ここに挙げたコストの問題も、健全にプラントが運営されていればという前提付きですが、事故に補償コストが入れば何倍にもなりますね。

投稿: maeda | 2011年4月23日 (土) 11時17分

行政指導できるような会社ではないという言葉は、怖い反面、納得できちゃう気もします。東電が他の8電力と力をあわせて動いているうちに、国も制御できないモンスターになってしまったという絵ですね。原発だけでなく、電力会社も制御不可能状態になってしまったんですか。

投稿: 佐久間裕幸 | 2011年4月23日 (土) 11時44分

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