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2011年3月 6日 (日)

伊藤 醇 著 命燃やして~山一監査責任を巡る10年の軌跡~

 こういうタイトルの書籍を読んだ。驚いたとしか言いようがない本だった。私は、これまで山一事件における監査法人は、証券局長が「これくらい山一なら一相場あれば解消できるでしょう」といって損失飛ばしを容認していたから、これにNoを突きつけられず、しかし山一が破綻するにいたって、梯子を外されたのだと思い込んでいた。

 ところが、この本によれば、監査法人は、やるべき監査手続きをやっていたが、会社ぐるみどころか特定金銭信託の委託先である信託銀行からも虚偽の運用報告書を出されていたために不正が発見できなかったのであるという。そして、60億円の損害賠償を受けていた山一證券管財人からの訴訟には、勝てると思ったが訴訟費用・訴訟負担に耐えかねて、1.6億円で和解。株主からの訴えには4件の訴訟すべてで勝訴しており、その中で監査手続に瑕疵はなかったと認定されているという。

 メディアが伝えてきた報道ってなんだったのだろう。そして、同じ公認会計士でありながら、身内に対して世間の目と同じレベルでしか見ていなかったことにショックを感じた。

 ちなみに株主オンブズマンの訴訟にいたっては、かなりいい加減な弁護士の扇動によるものだったようだ。そんな訴訟でも、訴えられれば弁護士を雇い、弁護士に提供する情報を揃えるために膨大な内部時間を割く必要が求められ、そして訴訟に勝っても弁護士費用もさることながら、膨大な内部時間についても補償されることはない。対政府の訴訟などには、濫訴を防止するルールが法律の中に織り込まれている。たとえば、税務訴訟は、訴訟前置主義といって、異議申立、不服審査経なければ、提訴できない。しかし、民間同士の訴訟は、訴えられたらそれまでである。さらに、メディアも4~5年経過したあとの勝訴の報道はほとんどしてくれない。山一事件のような大きなものであっても、勝訴の報道はほとんどなかった。あれば、大ニュースだけに記憶に残るはず。だって、信託銀行が山一證券に加担して監査法人を騙していたのだから。

 細野会計士の「公認会計士vs特捜検察」もインパクトがある本だったが、こちらの本のほうが公認会計士としてぜひとも読んでおくべき本だと思った。

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