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2010年9月25日 (土)

起業体験プログラム

 この間の連休には品川女子学院の文化祭で行われる起業体験プログラムの決算と株主総会の見学(応援?アドバイザー?)に行ってきました。

 起業体験プログラムというのは、品川女子学院の教育プログラムの1つです。高校1年、2年生が文化祭で飲食や物品販売の模擬店をやるにあたり、株式会社を模して、必要資金をOGで構成されるベンチャーキャピタルから調達するためのプレゼン、会社の登記などの設立準備から文化祭当日の販売、そして文化祭の翌日にその成果を決算して、営業報告にまとめて、株主総会を開催し、会社を清算するという過程を体験するプログラムです。そして、良好な営業成績を出した上位3社が表彰されます。以前、カンブリア宮殿というテレビでも紹介されたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 この運営には、5月くらいからの「会社とは何か」という勉強から始まる教材の提供から会社運営の教材、この全過程を支援までNTVP(ニュー・テクノロジー・ベンチャー・パートナーズ、村口社長)の協力により成り立っていますが、手の足りない部分は、父兄の中で経理マン、公認会計士、税理士、弁護士、司法書士、ベンチャーキャピタリストなどの専門家が支援者として参加しており、そんなことで私も参加するに至っています。
 
 今年は、飲食企画ではタコス、タイ焼き、アイス最中、カレーパン、肉巻きおにぎりが登場し、物販ではリップクリームとフリマの開催、Rodyのストラップ、モンチッチのパスケース、手作りキャンドル、トートバックの会社が出店しました。今年、最大の利益を出したのは、売上高177万円で利益で25万円を叩き出した会社。しかし、物品の仕入れのために資本金143万円も調達しており、ROEでいえば17.8%。そのため、ROEでは、より良好な成績を出したタイ焼き、アイス最中、手作りキャンドルの会社が1~3位となりました。逆に赤字となってしまって、配当どころか生徒が出資した1人500円の株式が紙きれになったクラスもありました。
 
 帰りの北品川駅で「私たち、儲けすぎちゃったから成績優秀会社に選ばれなかったんだよ」みたいなことを話している生徒の声が聞こえてきました。でも、君たち、違うんだよ。他の会社は資本金20万円~30万円程度で5~10万円の利益を出し、株主の資本を何十%も増やしている。しかし、利益1位の会社は、17.8%しか増やしていない。しかも、生徒の出資は、1株500円で数万円、残りの140万円はベンチャーキャピタルが出していて、このプログラムのルールではVCには6株しか発行されていない(その分、発行価格が高い)。そのため、VCのお姉さんたちは、140万円の投資の結果、資産を3万円ほどしか増やせていない。それで優秀な会社といえるだろうか。
 
 株主総会終了後の講評として校長先生も語っていました。「企業経営において資金の調達というのはとても大変なことです。起業体験プログラムでは自動的に必要資金が準備できてしまいますが、世間では自分で出資をして、経営がうまくいかなかったら迷惑をかけることを承知で親族や友人に出資をお願いし、さらには個人保証をして銀行からお金を借ります。」
 
 つまり、「このビジネスなら儲かる!」ということがわかっていても、無尽蔵に資金を調達できないのが現実の社会。その観点がROE重視という評価にたどり着いたのですね。逆にいえば、資金調達の上限を設けていないプログラムのシステムにも問題があったわけで、おそらく来年に向けてここの改善が図られると思います。「とにかくやってみて、不具合は走りながら修正する」というのが品川女子学院の校風であり、魅力なので。
 
 日本では、起業家が少ないといった経済の低迷感が漂っていますが、ROEなんて概念も学んでいる高校生が育てられていることのご報告も兼ねて、ブログにしてみました。

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2010年9月22日 (水)

貝合わせで辿る芭蕉の旅

 平安時代、「貝合わせ」という遊びがあったことは、源氏物語だったか枕草子みたいな読み物の中でご存知かもしれません。ま、トランプ神経衰弱の平安バージョンみたいなものです。ただ、どんなものかは、なかなか見る機会もないのですが、本日、それを見たので、ご報告。

 足立区の呉服屋さんが、芭蕉の「奥の細道」が千住からスタートしていることにちなんで、友禅作家の技術を合わせて「奥の細道」にちなんだ貝合わせを制作し始めて、今年になって完成したのだそうです。けっこうきれいで、素敵な工芸品だなぁと思って、紹介しようと思ったけれども、写真がない。ふと、ググってみたら、下記のページがありました。
 http://www.adachi-asahi.jp/?p=9587
 
 お店には、呉服屋さんだけにこれらを題材にした帯や着物も展示してありましたが、いいもんだなぁと。上記のページには、お店への地図もあるので、お近くへお越しの方は、寄ってみると良いと思います。
 

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2010年9月 8日 (水)

景気対策で計画道路の着工を

 田舎で100億円の道路工事をすると、おそらく土地の取得費が5億円、工事代金が95億円という感じかもしれない。しかし、都会で同じ100億円で道路を作ろうとすると、土地の取得費に70億円くらいかかり、道路工事には30億円しか使えず、田舎より1/3の距離の道路の整備しかできないかもしれない。

 しかし、計画道路の着工であれば、そもそもある程度取得が進んでいる部分もあるだろうし、土地の取得費70億円もそれで立ち退いた人は、新規に住まいや店舗を購入し、あるいは収用された面積部分の取り壊し工事やそれに伴う建物リフォームなどを行うに違いない。そして、一般論として、家を引っ越したり、リフォームをすると、古いテレビなどを捨てて新品を購入したりすると言われている。また、建築後にカーテンを購入したり、庭に植木を植えたり、70億円の土地取得費がプラスαの民間需要を呼ぶのではないかと思われる。

 さらに道路が走りやすくなれば、渋滞が減り、歩道が適当な広さに整備し終われば、店舗の営業もしやすくなる。計画道路が完成してしまえば、その沿線には堅固な建物を建てられる道路沿いの土地が生まれるようなものだから、それも新規の建築需要を生む。しかし、こうした追加的な需要の発生は、田舎の道路では生じえない。

 今、虎ノ門近辺では、いわゆるマッカーサー道路の建設が進んでいる。この道路が完成したら、きっとあのビルは建て替えるに違いない、この閉鎖されているシャッターに新しいお店が入るに違いない・・・。この工事現場周辺を眺めるたびに、事業仕分けで浮いた予算は、こういう公共工事に回すべきなのではないかと思うのです。

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2010年9月 6日 (月)

「第4のビール」は「革命的ビール」

 サントリーのAll Freeが売れすぎで一時販売停止になるほど、ノンアルコールビールが売れている。発泡酒や第三のビールを飲むくらいなら、ノンアルコールビールだってそれほど不味いわけじゃないという気がする。いろいろなニュースで見ると、ノンアルコールビールが何百万ケースと売れる見込みらしい。
 
 そこでふと、考えてみる。ビールや第三のビールは、酒です。だから、酒税がかかっている。いくらかかっているかといえば、第三のビールで1klあたり8万円。ビールで同じく22万円。これを350mlの缶ビールに換算すると、28円と77円。そうすると、ビール会社の手取りはいくらになるかといえば、カクヤスの値段で見ると、「麦とホップ」や「金麦」が120円なので、28円を引くと92円。「スーパードライ」や「一番搾り」が205円なので、128円。しかし、ノンアルコールビールは、「フリー」と「休む日のAlc.0.00%」が145円、「オールフリー」が139円。
 
 あるいは、小売店など流通の利益を20%くらい見込むとして、お店の値段の80%から酒税を引くとビール87円、第3のビール68円、ノンアルコールビール116円ということになる。これが、そのままビール会社の収益になるんだからノンアルコールビールは、第3のビールの倍近い値段で売れていることになる。。
 
 ビールの酒税逃れに発表酒を考案し、さらに第3のビールも考案した。しかし、アルコールを含有させないことで、酒でないビールテイスト飲料にしてしまえば、手取りがふえるということになるわけです。延長線上にあるという意味では、「第4のビール」と言えますが、小売価格が下がってきた傾向を打破したという意味では、「革命的ビール」ということになります。
 
 宴会で、ノンアルコールビールを飲んだのでは、酔わないし、周囲から見ても辛気臭い。しかし、帰宅時の一杯、風呂上がりの一杯で酔う必要はないので、それであればノンアルコールビールで十分かも。私は、どうせアルコールを摂取するなら美味い方がよいので、日ごろ自宅にはザ・プレミアム・モルツを置いており、それと比べればノンアルコールビールは美味くない。しかし、喉が渇いている時なら、飲めてしまう。第3のビールと比べるならば、大雑把にいえば味に差はないのではないか? ということは、ノンアルコールビールの出荷量はますます増える。そして、競争が価格競争になるまでの間は、ビール会社の収益も潤すのではないかと思うのです。と同時に、第3のビールが出た頃、当時の政府税制調査会会長ので石弘光一橋大学教授が「日本の酒文化を壊す」と嘆いたのは、このことかと炯眼に感心する次第です。酒税対応を進めた結果、「ビールが酒じゃなくなった」のですから。

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2010年9月 1日 (水)

給与と報酬の違いとそれが及ぼす影響

 昨年12月に「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」という法令解釈通達が国税庁から出ています。この手の業種では、職人さん(一人親方などと呼ばれます)に外注費すなわち給与ではなく報酬として支払うのが一般的ですが、給与との区分はこういう基準で判断してください、という通達です。基本的には、請負契約もしくはこれに準じた契約によれば報酬となり、雇用契約もしくはこれに準じた契約によれば給与となります。しかし、その区分が明らかでないときは、次の事項を総合勘案してくださいとなっています。

(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。

 (1)は、独立して事業をしているAさんに仕事を頼んだ場合に、そのAさんの弟子のBさんも加わって仕事をしたり、Bさんだけが仕事をしても良いなら、これは請負契約だから報酬で良いということです。逆にAさんに頼んだのだから、Aさんがやらないといけないのであれば、給与だという判断なのでしょう。しかし、実際には企業間の取引でも、「今回の仕事の担当は、Aさんがプロジェクトの責任者になってくれるのですよね」といった条件付きの取引はある。それなら、「職人のAさんの腕を見込んでの単価での発注なんだから、Aさんがやってよね」というのも請負契約だとなる余地はあると思います。
 (2)は、朝の8時から18時の間にやってくださいといった拘束を受ければ、給与である可能性が高いということでしょうけれど、工事をそれ以外の時間にやったら近隣から苦情が持ち込まれるので、これは判断基準になるのか疑問に思えます。もちろん、仕事の進捗に関わらず、8時から18時には現場にいなければいけないという拘束がかかるなら、明らかに給与なのでしょう。
 (3)は、同じく指揮監督を報酬の支払者から受けるようなら給与だということなんでしょうけれど、「内装屋さんが壁の下塗りをし終えたら、電気工事に入ってください」というのは当然の指揮監督ですから、給与と報酬の区分の決定打にはなりにくい。
 (4)は、工事現場が火災になったような場合の対処でしょうか。火事になって現場での作業の成果がパーになっても報酬がもらえるなら給与、成果物を引き渡せていない以上報酬がもらえないなら報酬だということですが、通常は、火災保険などに加入するのは元請けの事業者でしょうから、その保険金から下請け業者に報酬を払っても給与だとはいえないのではないかと思うのですが。
 (5)は、一見なるほどという基準ですが、元請け業者の方が材料の仕入れ単価が低いことが多いので、材料や用具を支給した方が全体の工事原価が安くなります。なので、(5)の基準を金科玉条のように適用されたら、みんな給与にされちゃうような気がします。

 以前の通達は昭和28年に出されたものですが、これが改正されるにあたって、(5)の基準は新たに出てきたものであるという印象があります。しかし、これは実態に合わない。もし、これらの5つの基準を厳しく適用されると、今まで請負契約だという前提で外注費を払っていた経費を給与だとされてしまう恐れがあります。そうすると何が起きるか。
 まず、外注費には消費税を乗せて払っていましたので、これが給与にされた瞬間、外注費の5%分だけ消費税の過少申告だということになります。さらに給与なので、源泉所得税の徴収漏れということになります。これは中小企業にとって、大問題になると思います。ですから、外注業者との契約関係は、明確にして、請負契約であることが確実になるようにしておく工夫が必要だと思います。

 ここから先は、憶測です。もしかすると、国(財務省だけでなく、という意味)として、個人事業者を減らして、雇用者を増やそうという戦略があるのではないでしょうか。そうすると、国民健康保険、国民年金の加入者が減り、社会保険、厚生年金の加入者が増えます。当然ながら、無年金問題もなくなるし、怪我をすれば労災保険。仕事を失えば雇用保険。政府が用意するセーフティーネットの中に入ってきます。今は、個人事業者が仕事を失えば、生活保護しかなく、失業保険に相当するような中間的な保護の網がありません。

 と、考えてみれば、政府の経済対策も「雇用対策」が打ち出されたりしていて、「仕事を増やす」という対策はありません。だから、個人事業者はいつまでも干上がったまま。これを解消するための、最初の一歩がこの法令解釈通達であったと考えると、今後のこの通達の運用は厳しく行われるのではないでしょうか。しかし、そうなると外注費を払ってきた中小の建設会社には大打撃が生じます。雇用となれば社会保険に加入しなければいけないので、今までの外注費がそのまま給与となり、それに加えて約20%の社会保険料の支払いが企業を直撃します。消費税の納付額も増える。もらった側、すなわち雇用とされた側も社会保険料を天引きされるので、手取り収入が減る。雇用したからといって、直ちに社会保険に加入させなくたって、ばれていない会社だってあるじゃないか?という意見もあるかもしれませんが、歳入庁構想というのがあるじゃないですか。国税庁と社会保険庁が合体して、歳入庁になったら、税務調査の時に社会保険の加入状況も調べられてしまいます。昨今の経済情勢で、多くの中小企業は赤字ですから、税務調査はあまり怖くないですが、外注費を調べて、消費税、源泉所得税に加えて社会保険加入までさせられたら、ものすごく怖いです。

 もちろん、制度どおりに正しく運営がされるのは良いことです。しかし、ゼネコンが中小建設会社に支払う工事代金の算定ベースは、一人親方への外注費を前提としたものです。ここの単価アップがないままに制度どおりに正しく運営されると、先程のような社会保険料と消費税の直撃で中小建設会社は、倒産に追い込まれる可能性が大です。日本にある会社の数は、200万社と言われていますが、そのうち56万社以上が建設業に属しているというデータがあります(平成17年3月末の建設業許可業者数調査)。日本の会社の1/4が大変なことになるという可能性を認識したうえで、歳入庁構想や通達の運用を考えてもらいたいものだと思います。

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