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2010年7月 9日 (金)

消費税の問題、触れられていない残った課題

 今週のダイヤモンドは、消費税が特集のテーマになっていました。その中では、税制という面では、給付付き税額控除、軽減税率、納税者番号、インボイス制度でないことによる免税業者の益税の問題が取り上げられていました。給付付き税額控除と軽減税率については、運用上の課題なども掲げられていて一応の内容になっていたと思います。

 しかし、それ並みに大きな問題で触れられていない問題があるなと思いました。それは、仕入税額控除の課税売上割合95%の問題。

 免税業者の益税というのは、実は、たいした問題ではないのです。というのは、課税事業者の基準を3000万円から1000万円に引き下げた時の申告件数の増加と納税額の増加の統計をみると、件数の増加の割に納税額は増えていないこと。つまり課税売上高1000万円から3000万円の事業者が得ていた益税というのはたいした金額ではなかったということ。仮に課税売上900万円の事業者が全部手間賃の仕事で900万円×5%=45万円の益税があったとしても、せいぜい、そういう金額。売上700万円、仕入や外注費が400万円の事業者なら、15万円です。 そういう事業者が何万社あるか?という計算をすれば、確かに数千億円とかにはなるんですが。
 
 仕入税額控除の課税売上割合95%の問題は、そういうオーダーの話ではありません。売上高1兆円の会社で、従業員への社宅の収入、地代収入、有価証券の売買などで非課税売上が100億円あったら。本来は、その100億円に見合った仕入税額は控除できないのですが、課税売上割合が95%以上なら全額課税売上に対応する課税仕入れとみてよいという規定があります。そのため、100億円に対する課税仕入れが全部控除できてしまいます。すなわち1社数億円。
 
 零細企業にきちんとした消費税計算をさせるのはかわいそうですが、大企業は会計システムがしっかりしていますから、計算はできるはず。それであれば、この部分を改正すると数千億円の増収が図れるかもしれません。
 
 あるいは、簡易課税の問題。現状は、売上高に一定の率を掛けていますが、これは大雑把。消費税は付加価値税であるという本質からすれば、簡易課税の計算は、「(人件費+減価償却費+保険料+租税公課+支払利息)×5%」という計算にするということでもよいのかもしれません。これを導入すれば、減価償却の計算をきちんとしないといけなくなるので、中小企業の財政状態の健全化に役立つかもしれません。黒字にしたいがために減価償却をしないというズルをする会社も少なくないようですので、中小零細企業では。
 
 それから、税率が上がる前提では、ほかにも直さないといけない部分があります。それが消費税法が帳簿の書き方まで決めている部分。条文で「取引の日時、金額、取引相手の氏名または名称、取引内容」を書けと決めてしまっています。しかし、出張旅費の精算であれば、精算日で伝票が切られ、摘要欄に「×月×にち出張分」とまで記載している会社は少ないはず。東京の会社の水道光熱費の科目は「7月分、東京ガス」とか「7月分水道局」とか「7月分ガス代」といった書き方をしている場合も少なくないはず。しかし、消費税法どおりに考えれば「7月分東京ガス株式会社、ガス代」と書いていなければ仕入税額控除ができません。消費税率が10%になったとして、水道光熱費が500万円の会社であれば、50万円分の過少申告加算税リスクを負うことになります。税務調査をする側は楽です。調査に行って水道光熱費を見て、ちゃんと書いてなければ、「はい、これは記載要件を満たしていないから、消費税の仕入税額控除になりません」と宣言すれば、数10万円の修正申告ですから。
 
 消費税は、なんとか導入しないといけないということで、一般消費税、売上税の失敗を経て、強引に作った条文なので、粗も多いと思います。税率アップの際には、こういうことも見直してほしいのですが、週刊ダイヤモンドの特集でもこのレベルですから、ちょっと残念。

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