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2010年7月 1日 (木)

日本証券業協会

 本日、7月1日までの期限で、日本証券業協会のホームページでパブリックコメントの募集が行われている。

http://www.jsda.or.jp/html/oshirase/public/10061001.pdf

 これによると、未公開会社がその成長過程で友人など(親族、役員などでない場合)に増資を行っていた場合には、上場引き受けをしないというもので、そういう規則改正についての意見を求めている。しかし、友人・知人あるいはエンジェルやメンターと呼ばれる人たちの支援を受けないで上場する会社ってあるのだろうか? スタンフォード大学生のヒューレット君とパッカード君を大学教授が応援して、会社を起業させた場合、できあがった会社は上場できなくなるということになる。

 趣旨は分かります。未公開株式詐欺が横行しているので、それを防止したいということ。しかし、この規制では、ベンチャー企業の成長を妨げるだけで、詐欺は減らないと思います。そこで、パブリックコメントを出してみた次第です。

① 氏名又は名称
② 連絡先(電子メールアドレス、電話番号等)
③ 法人又は所属団体名(法人又は団体に所属されている場合)
④ 意見の該当箇所
 規則第3条の2、細則第2条第3項
⑤ 意見
 上記の規定においていわゆるエンジェルやメンターを排除しないように規定を作り直すべきである。
⑥ 理由
 「有価証券の引受け等に関する規則」において、「個人投資家に対して募集又は私募を行っていた場合には」引き受けしないように定めているが、エンジェルやメンターといった創業期を支援する存在を排除するように読める。
 「細則」においては、「発行者の株主、役員及びその親族並びに従業員及びその親族に対してのみ募集又は私募を行っていたとき。」には適用除外としているが、この規定では、エンジェルやメンターが設立当初から株をもっていない場合(「発行者の株主」に該当しない)には適用除外とならない。増資前に役員になってもらえばよいことになるが、「お金は出すが口は出さないよ」という主義のメンターを排除することになる。
 また、親族については、特に定めがないので6親等以内を想定しているかもしれないが、この場合、経営者の妻の姉の夫が6親等内の親族から外れるように思えるが、どうか? すなわち、経営者の近辺に存在する純粋に会社を応援する者を排除するような規定ぶりになっているので、規定の作り直しが必要である。
 
 そもそも未公開株式詐欺を防止するという意味では、会社自体が募集や私募をすることを禁じるよりも、「募集や売出があるかのごとく勧誘する第三者」を排除することが必要なのではないか。その目的からすれば、規則で会社自体の募集や私募を禁じた上で、細則で有価証券届出書の提出の場合を免除しても意味がない。なぜなら、詐欺に遭う人は有価証券届出書の有無をEDINETで調べたりはしないからである。
 「個人投資家」とはどの程度の人をいうのか?というのは、日本のみならず制度設計において話題になっているが、公認会計士として私が聞いているのは、「ウォール街や兜町を歩いているような人」という定義である。たしかにその程度の水準を想定しないと、有価証券報告書を読み込めるわけはない。それであれば、そういうレベルの個人投資家に私募をしていた会社を上場させないということになるのであり、未公開株式詐欺という目的と今回の規制がマッチしないように思える。

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