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2009年2月 2日 (月)

未経験者は、ずっと未経験者のままになってしまう

 文京区に鴎外記念図書館というのがありまして、建物が老朽化してきて建て替えが必要になっています。そこで、設計の応募をしているんですが、参加資格を見ると下記のようになっています。
 
 3 プロポーザルの参加資格
プロポーザルの参加資格は、以下の要件をすべて満たすものとする。
(1)建築士法(昭和25年法律第202号)第23条の規定に基づく、一級建築士事務所の登録をしていること。
(2)平成11年4月以降に文学館、美術館、博物館又は資(史)料館の新築(延床面積1,000㎡以上)に関する設計業務実績があること。
なお、プロポーザル参加者が、契約締結までの間に参加資格を有しなくなった場合は、その時点で失格とする。

 平成11年4月以降に延床面積1000平米以上の美術館等を設計したことがある一級建築士事務所って、いくつくらいあるのでしょうか。「こういう分野に進出してみたい!」とかいう設計士さんがいても、これじゃ参入できませんね。経験者と一緒にジョイントベンチャー的に参加して、参加実績を積まないといけないのですね。無償で参加させていただくという感じ? ただ働きする余裕がなければ、一生、公共施設の設計はできないのでしょう。

 もちろん、美術館や博物館の場合、資料の保存のため、湿度や温度の維持など空調面での配慮やお客さんの移動の経路と館員の資料の出し入れの経路や展示室と保管室の区分など経験が必要な面もあると思います。しかし、発注側にそういった要件をチェックする資質があるならば、あるいは資質がなければ設計をチェックしてくれる経験者をコンサルタントとして依頼すれば、設計士のほうに経験を求める必要性もないのかもしれません。なにか考えてくれないと、初心者は、ずっと初心者になってしまいます。また、経験はある設計士が、その経験を生かしていない設計したとしても、通過してしまうことになります。

 実は、お役所の仕事にはこれと似たことがたくさんあります。建設業における業者登録もそう。建設業者は、建設業法に基づいて業者登録をしなければいけません。しかし、この登録申請の要件の中に、経営者が建設業の経験5年といった要件が入っています。例えば、建設機械の開発会社の中で試作品のテストオペレータをしていた人が、その経験をもとに機械作業の請負会社を起こしても、建設業に従事した経験が0年なので、たぶん業者登録できないと思います。で、そうすると起業を諦めるか、建設業の経験が5年以上の人に形式だけ取締役に入ってもらうとか、形式作りに走らないといけなくなります。あるいは、業者登録を出さずにモグリになるか。業者登録というのは、どんな建設業者かわかるようにして、発注者に安心して発注してもらえるように・・・という制度なのだとすれば、社長の経歴書があれば、「建設業の経歴はないけど、テストオペレータを10年もしていた人だから、安心だ」とか、「それでも実際の経験はないので、ちょっと不安だから、発注をやめよう」とか判断できるわけです。それで良いのではないかな?と私は思うのですが。

 そういえば、正社員問題にも似たところがありますね。30歳過ぎて、パートやアルバイトの経験しかないと普通の会社での正社員募集では相手にされない。だから、ずっとパート・アルバイトの仕事を探さざるを得ない・・・みたいな。これに対しては、トライアル雇用助成金なんて制度があって、事業主には、トライアル雇用を実施する対象労働者1人につき、月額50,000円が最大3か月間支給されます。つまり、トライアル雇用する正社員未体験者に月給15万円払うとしたら、そのうち1/3をハローワークが負担してくれるので、「まずは実質10万円の負担で試してみてね」というわけです。
 ま、話は飛んでしまいましたが、「やったことがない人にチャンスを与える」って、社会の活性化にとって重要だと思います。

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コメント

美術館・博物館・資料館はノウハウが必要なので、実績は必要と思います。ただ、1000平米以上の区切りはなんとも・・・。この面積制限があるとゼネコンや組織事務所しかプロポーザル出来ないでしょうね。それでも10は超えるから十分と言えば十分ですが・・・。

投稿: しょうたく | 2009年2月 2日 (月) 21時54分

未経験に機会を与えるには発注者がリスクを負いますがその度量があるかないかかと思います。今の世相はただリスクを避けるだけなので挑戦する人は苦しいですね。だけに、一つにチャンスを生かせる心構えが必要かと。これが高度成長期やバブルの頃ならもっと緩かったですけど。

投稿: しょうたく | 2009年2月 2日 (月) 22時02分

しょうたくさん、コメントどうもです。
 ま、実際、しょうたくさん辺りが入札に参加したら…と考えないでもないで書いたブログですので、ばっちりのコメントですが。
 「区民の税金だから安心できる建築事務所にお願いしたい」という発想もありですが、「個人住宅の建築と違って、区にはチェックできる能力があるから、新人建築士にもチャレンジのチャンスを与えよう」という発想もできなくはないです。
 安全を採るか、機会の提供も意図するか、気持の問題でもありますね。

投稿: 佐久間 | 2009年2月 2日 (月) 22時26分

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