« 相続税法の大規模改正は消えた? | トップページ | 明けましておめでとうございます »

2008年12月17日 (水)

政府税調での議論

 http://www.cao.go.jp/zeicho/gijiroku/kikaku27kaia.pdf で、11月18日の政府税調の第27回企画会合の議事録が読めます。
 今回の相続税法の抜本改正が葬られるプロセスが良く見える議論が議事録になっています。例えば、
○高山委員
 今年1月11日の閣議決定が「企画27-1」の資料の1ページ目にあるのですけれども、事業承継税制については制度化が既に行われているわけで、遺産取得課税方式に改めることを検討するということなんですが、私の理解では昨年、確かに発端は事業承継税制だったのですけれども、それとは離れて、やはり相続税一般の議論の方でかなりやったと私は理解しているのです。
 基本に関わることで言えば、こんなに相続税収が減ってしまった。あるいは相続税を納めている人がこんなに少ないではないか。他方で、いろいろな理由で相続税の課税強化に対する理屈づけを我々はしたのではないかと思うのです。

 事業承継税制のためには遺産取得課税だと説明されていたわけですが、税調の議論の中では、それは発端に過ぎず、相続税増税を目論んでいたことが明確に告白されているわけです。
 そして、話題の事業承継税制についても
○上月委員
 事業承継税制との絡みなのですが、実は事業承継税制が非常に私も期待していましたけれども、現実に拝見しますと、これは実際に、それを適用できる企業が果たしてどれくらいあるのか。非常に条件が厳しくて、今、特にこういう経営状況の中で、5年間保有する、そして、その後にもしも譲渡したら、その時点で利子税がかかるとか、このままですと、事業承継税制そのものがあまり実効性がないのです。これがもとで、今、遺産取得者課税という話が田近先生からもありましたけれども、もし、そういうことであるならば、今のままの事業承継税制であれば、相続税の課税方式を遺産取得者課税に変える必要はないと私は思っています。それほど事業承継税制が不公平といいますか、公平性に問題があるほど皆さんが活用できる制度ではないのではないかと思います。

などと本質を突いた指摘がなされて、とりあえず、現行方式の中で事業承継税制だけ入れればいいじゃないか、といった意見がでています。
 そうした意見を受けて、もっと良い事業承継税制の改良も必要だろう。税金を取れば良いというものではなく、企業が元気でないと国民みんなが困るのよ・・・というすばらしい意見もあります。
○井上委員
 事業承継税制は決まったことでして、先ほど上月委員からお話がございまして、非常に使いにくいという問題も確かにあろうと思います。しかし、まずはこれはスタートして、この次にどういうふうに改善するかが大事だと思うのです。
 やはり、事業承継というものは何なのか。基本的には企業を継続させて、その中小企業をいかに発展させていくかということの問題から派生しているはずだと思うのです。要するに、相続税でも何でも取ってしまえばいいのだということではなくて、企業を存続・継続させる。今の中小企業の2,800万人の雇用をいかに継続させていくのか。そして、そこで生み出している58兆円からの付加価値があるわけです。大企業に比較してももっと多い付加価値がある。そういうものをどういうふうにして拡大化させていくのかが大事なわけなのであって、その目的を忘れて税を取ればいいということに走ってしまっていいのかと思います。
 どうも笑われて困るのですが、企業があって生活があることをどうも忘れているのではないか。お金は降ってこないのです。企業で働いて、それで稼いで、我々が裕福になる。皆さん、そこをもっと根本的に、この税調でも考えるべきだと思うのです。

 そして、これも本質を突いた指摘として、
○横山委員
 1点だけでございまして、私は社会保障の財源として相続税の位置づけといいますか、意味づけは、吉川委員がおっしゃられているような、やはり社会から受けた給付に対応する負担を死亡時に清算するという考え方が非常にこれからの社会保障を考えているときに私も重要だと思っていますので、そこと、この課税方式を遺産取得課税方式に改めることの整合性をやはりどこかで詰めておいていただかないと、清算という言葉は、やはり支出課税のようなベースの考え方で、これを所得課税、いわゆる遺産取得時に課税するという方式に変えることの意味が、今後、恐らく社会保障財源という位置づけを相続税でやろうとした場合の整合性を考えておいていただきたいという要望です。

というのがありました。少子高齢化の中で、社会保障の恩恵を受けながら財産を残して死んでいるのだから、社会保障分のお礼として相続税を課税強化しようという考え方がでてきているが、それなら遺産を取得した人に課税ではなく、遺産額に課税をして、その残りを相続人が分ければ良いという現行方式の方が妥当ではないか?という意見です。

 ちなみに各委員の経歴は、高山憲之 一橋大学教授(公共経済学、経済政策)、上月英子 税理士、井上裕之 愛知産業(株)代表取締役社長、横山彰 中央大学教授(公共経済学、財政学)ということですが、すばらしい委員の方々だと思いました。最後のところを読むと、会議の予定時間を超過しての熱い議論だったようです。

|

« 相続税法の大規模改正は消えた? | トップページ | 明けましておめでとうございます »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/181294/43444646

この記事へのトラックバック一覧です: 政府税調での議論:

« 相続税法の大規模改正は消えた? | トップページ | 明けましておめでとうございます »