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2008年11月 9日 (日)

税制改革論議

 今朝の日経に税制改革に関して自民党の柳沢伯夫さんのインタビューに基づく記事が1面に出ていました。大雑把にいえば、所得税の最高税率は引き上げ、消費税も経済状況を見ながら引き上げ、法人税は引き下げというまっとうな話が出ていました。所得税については、最高税率は所得税と住民税を合わせて50%なので、十分なのではないか?と思うのですが、過去には70%を超える時期もあったはずなので、引き上げたい欲求は理解できないでもありません。しかし、あまり所得税を引き上げると頭脳流出が起きるのは確かです。イギリスの税率が高いからビートルズはアメリカに行き、例の小室哲也もロスアンジェルスに住んだ時期がありました。小室哲也が「頭脳」か?と言えば、異論もあるとは思いますが、ノーベル賞の受賞者もアメリカ在住の人がいましたね。要するに100億稼げる人間が日本に住んでいれば、日本国に50億円の税金を払ってくれる。しかし、欲張って70億円もらえるような税制にしてしまうと、彼らは香港やアメリカに住み、30億円とかの税負担で済むようにして、日本国は70億円どころか50億円の収入も失ってしまうのです。堺屋太一さんの知価革命という言葉通りならば、知識活動こそが価値を生むのであり、そういう人間に日本に住んでもらうことこそが日本の将来につながるのかもしれません。

 同じ観点から評価できるのが、法人税の引き下げ。今や、25~30%位の法人税率が世界の潮流。アメリカが法人税率を引き下げれば、実効税率38%超の日本は世界で唯一の法人酷税国になってしまいます。かつて、マイクロソフトのアジア統括会社は、マイクロソフト・ジャパンでしたが、今はシンガポールの子会社がアジア統括になっているはずです。つまり日本の高税率を嫌って、利益がシンガポールに計上できるように変更してしまったのだと考えられます。トヨタもソニーも日本の会社だ、彼らは日本の会社なんだから、彼らがたくさん税金を払ってくれればそれでいいじゃないか、という発想もあるかもしれませんが、それで彼らの体力が失われて、国際競争に負けたら金の卵を産む鶏を殺すことになります。また、おそらくそうなる前にトヨタもソニーも本社機能を海外に移してしまうと思います。つまり、子会社からの受取配当金を受け取る金融会社を日本ではなく、香港やシンガポールやニューヨークやケイマン島などに置き、ウクライナに新工場を造るから、ウクライナの子会社に1000億円の増資を・・・という時にはその金融会社から出資したりすると、日本の親会社は、日本国内からの収益分の所得しか上がらなくなります。

 そして、消費税引き上げ。これも法人税の地位を下げるものではないかと思っています。なぜなら、消費税が5%から10%になれば、企業が支払う消費税額が倍になるというだけのことではないと思うからです。消費税が倍になれば、時給1050円のパートさんの給与は1100円にならないと生活に困る、月額21万円の給与の人は22万円にならないと生活に困るという発想になると思います。もちろん、住宅家賃は非課税ですから、そのままではないですが、おそらく最低給与水準の引き上げなどの施策は行われるに違いありません。

 その結果、企業の売上の消費税の預かりが増え、仕入れ代金や旅費交通費など支払う消費税も増え、差し引きの消費税額が増えるのと同時に給与額も増えることになり、最終利益を圧迫することになります。すると、法人税の課税所得が減るので、法人税収が減る。また、中小企業の中で消費税の増税分を価格転嫁できない会社が出てくるなら、そこも減収となるので、法人税を減らすことになります。

 消費税を引き上げるということは、法人税の財源を圧迫することになると思います。さらに法人税の税率を引き下げるのですから、法人税は国税の基幹税としての地位を失いつつあると考えます。ちなみに100円の税収を得るために係る徴税コストの観点では、消費税は圧倒的に効率がよい税収です。小さな政府を目指す上では、消費税の地位を高めることは必須かもしれません。

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