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2006年8月11日 (金)

税制改正要望・意見書

 「日本公認会計士協会から平成19年度税制改正に対する意見・要望について」という文書が出ました。同族会社の留保金課税を廃止してほしい、とか、欠損金の繰り戻しによる還付の不適用の規定を廃止するだけでなく、その期間をより長期にしてほしいといった例年の要望もありますが、今年は、注目の「特殊支配同族会社の役員に係る給与所得控除額相当額の損金不算入制度を廃止すること」というのが加わりました。

 この制度、財務省、国税庁の説明では、「オーナー会社では、役員が会社から給与を取り、さらにその給与から給与所得控除が控除されたのでは、(経費の)二重控除になるから、そうならないように給与所得控除額相当額を法人の所得計算上加算することにした」という説明になっています。しかし、オーナー会社でも社長の背広、靴、ワイシャツなどを経費に落としている会社はないです。もちろん、芸能人の会社であれば、衣装を経費にすることはあるでしょうが、あれは衣装であって、社長の背広とは違います。それとも、今後は、経費に入れてもいいんですか?国税庁さん。

 もちろん、社長が従業員の本音を聞くために食事に連れ出したり、業界情報を入手するための業界紙や新聞図書費などが会社の経費になっているのは確かで、サラリーマンがビジネス書を購入しても経費にできないのとは違って、ちょっとオーナー会社は有利です。でも、給与所得控除相当額まで部下に食事をご馳走したり、ビジネス書を購入しているサラリーマンって、どれだけいますかね。

 給与が500万円のサラリーマンの給与所得控除額は、134万円です。「青山」や「AOKI」でスーツを買えば3万円、ワイシャツ3千円。年収500万円で部下に毎月3万円とかご馳走している人いたとしたら、かなり偉いです。で、あとは、本が売れないというこのご時勢にどれだけの人が本や雑誌を買っているでしょうか。これらを足して、とても134万円になるとは思えません。そう、給与所得控除が高すぎるんです。この給与所得控除を下げて、その分基礎控除でも引き上げれば、今回の税制は不要だったのです。

 これに対して、「いや、給与所得控除には、事業所得などとの捕捉率の差など必要経費以外の要素も含まれているんです」という反論もあるでしょう。でも、そしたら、二重控除の部分は、もっと少ないから、今回の業務主宰者税制では法人が課税されすぎている・・・ということになりませんか? つまり論理矛盾なんです。矛盾のある税法は、不公平な税制です。そして、この税制で、株主に外部株主を入れようとか不自然な行動を中小企業がする場合も出てきていますので、租税の中立性にも反します。そして、この税制は、過去3年間の利益と役員給与から算定される基準所得金額によって税額が出てきますので、「そんな税制があるなら、利益の出たあの期に含み損があるゴルフ会員権を売却しておいたのに」という後悔を企業にさせる意味では、過去に遡及するような法律です。そして、過去3年分の履歴を洗わないと税額が計算できないという意味では、簡素じゃない複雑な税制です。

 要するに公平・中立・簡素という租税の三原則のすべてに反した異常な税制なんだと思います、この業務主宰者税制は。朝令暮改はないだろうなと思いつつもこれを税制改正要望に含めたのであろう日本公認会計士協会は、立派だと思いました。

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