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2006年8月31日 (木)

徴税コストと業務主宰者税制

 「税研」という雑誌の128号を読んでいましたら、一橋大学の渡辺智之教授の「タックス・ミックスについて」という論文があり、その中で、税務執行費用のことが書かれていました。税収100円当りの税務執行費用は、申告所得税10.57円、源泉所得税0.33円、法人税2.28円、消費税0.40円、間接諸税0.17円、酒税1.85円、相続・贈与税2.97円なのだそうです(詳細は、引用元の大野裕之、芥川浩一「消費税の簡素性・税務執行費用の推計と他税との比較」東洋大学『経済論集』29(1)を参照)。

 それを読んで、私は思いました。個人事業者の所得課税と業務主宰者税制でイコールフッテングだと財務省は言うけれど、個人事業者からの税収は、1割も目減りして歳入となるのであり、法人税の方が効率がよいのです。ぜんぜんイコールじゃない。こういう場合、個人事業者のうち規模の大きなところは、極力、法人成りしてもらったほうが、帳簿がより整備され、申告書も充実することで徴税コストが下がるのです。

 だいたい、個人事業主には、青色申告控除65万円があります。なんで、なんの経費もかかっていなくて65万円も所得から控除できちゃうのでしょうか。そして、そういうメリットがありながらも10万円の控除で満足していたり、白色申告をする事業者が多いというのは、ちゃんとした帳簿を作るためには、65万円×税率以上の金額の手間がかかるからであり、あるいはちゃんとした帳簿を作らないがために得られる誤魔化しの利得があるからではないでしょうか。

 うちにも個人事業のお客さんがたくさんいらっしゃいますが、この方々は、税理士報酬も払い、それなりにコストをかけながら適正な申告をしていらっしゃいます。しかし、そういう真面目な方々ではない方々が、申告所得税の税務執行費用を高めているわけです。そして、我々は、こういうお客さんに「個人事業で800万円くらい所得が出るようになると、法人になったほうが税務的に有利だから、法人にしたらどうですか?」というアドバイスをするわけですが、まさにその領域を業務主宰者税制がターゲットにしています。

 以前より主張しているように給与所得控除が高すぎるのが問題であって、給与100万円のアルバイターは税金ゼロ、一所懸命働いてやっと売上から経費の合計だけを差し引いて所得を計算したら100万円の所得が出た個人事業者は、帳簿がなければ100万円から青色申告特別控除10万円と基礎控除38万円を引いた52万円に課税されます。100万円の稼ぎといったら、憲法が認める最低限の生活するだけでも危うい金額ではないでしょうか。でも、課税されてしまう。でも、フリーアルバイターなら100万円でも無税。これこそ不平等税制だと思うのですが。給与所得控除を引き下げて、それと同額だけ基礎控除を引き上げればよいのですよね。 

 帳簿がある場合の青色申告特別控除65万円は、申告所得税の税務執行費用を引き下げるためのインセンティブです。それなら、法人成りも税務執行費用を引き下げるためのインセンティブと考えることはできないのでしょうか? こんな観点からも見直してみると、業務主宰税制もどうなんだろうか?と疑問が深まるわけです。

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